「行かずにしねるか」石田ゆうすけ。
実に7年5か月をかけて、世界一周を自転車でやった著者の手記である。
こういう本は、たいがい面白すぎる(笑)
まず、いくつかおさめられている写真がすごい。
ぼろぼろの自転車は、まさに「道具」そのものだ。趣味の対象ではなくて、生きた足としての自転車、という存在を強く感じる。
当たり前だが、MTBである。ランドナーとか、趣味ではいいのだけれども、実際に世界一周となればパーツが手に入ることが一番大事なのだ。
あちこちで仲間をつくり、またその仲間と別れながら、旅は進んでいく。
いわゆる「自分探し」ではなくて、「やりたいからやる」世界一周は楽しいだろう。
本書を読んで、印象に残ったのは2つ。
一つは、世界一の遺跡をティカルである、と著者が断言していることだ。ピラミッドも、アンコールワットもしのぐのだそうだ。
こういう話は、とにかく現実に見比べた人でないと語れない話じゃないか、と思う。
それから、とにかくもう一度行きたいのが、アフリカだということ。
赤茶けた大地を走り続け、もうろうとなりながら、最後に青い森を見たときの感激は忘れがたいのだという。
もう一度、ここに戻ってきたいと願う気持ちが伝わってくる。
評価は☆。
すごい作品である。ただし、生涯に一冊しか書けないだろうな。
あとは、すべて焼き直しになってしまう。
いつか、もっと自由になって、自転車で旅をしたいと考えたことがあった。
しかし、そうではない道を選んでしまった。
後悔もある。いや、きっといつかは、と今でも思っている。
そう思いながら、だんだんと年をとっていくんだろうと思う。
いつかは、ふらりと旅に出たいものだなあ。