Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

デフォルト

「デフォルト」相場英雄。

六本木のバーの飲み仲間のエコノミストが、不良債権処理にかかる地銀の破たん処理について、日銀と政治家の不正な裏取引をリポートしたことがきっかけになり、左遷、退職させられる。
そのエコノミストは自殺。
仲間が、その仇をうつために、日銀をデフォルトに追い込む、というストーリーである。

本書は一応、経済小説ということになっているが、経済に舞台を借りたお伽噺なのである。
登場人物はすべて神業級のとてつもない技量をもっていることになっており、その連中が官僚と日銀の鼻をあかす、というのだから、まあ、あとは推して知るべし(苦笑)

よって、本書に登場するスキームは、著者がいうとおり「嘘」なのである。
「どこから本当で、どこから嘘か、わからないように」とあるが、読んでいくと嘘がわかる。
ある種のSF小説と同じである。
これは、SFの手法としては古典的である。
つまり、事実にほんのわずかの飛躍を加える。すると、そこから派生して、壮大な嘘が出来上がるのである。そういう世界を楽しむわけだ。

評価は☆。

日銀については、長年続くデフレ不況で「いったい、どういう金融政策をやってるんだ」とお腹立ちの向きも多いだろう。
胸のつかえを下すくらいの出来栄えである。

まあ、現実の世界は、もうすこし面白くなく、かつ、簡単ではないように思う。
だから、物事は難しくなるのである。
ある種の問題を単純モデル化して、「こうすりゃ解決じゃん」と思う能力は、人間はすごいのであるが、しかし、それは万能ではない。
そういう問題を指摘したのはS・レム「枯草熱」だろう。

現実のデフォルトは、じりじりとやってくる。
気が付いたら穴に落ちているものだ。
一般人にとっては、自分がどの程度の穴に落ちているのか、それを知ることのほうが難しい。
簡単な話のようだが、それはなかなか小説にならない。
つまり、現実はドラマチックではないのである。

ドラマのような現実ができたら、その時点で勝ちであろうと思う。
何しろ、人生の短さときたら、そりゃもう、がっかりするほどなのだから。