Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

緊急報道

「緊急報道」メアリ・ジェイン・クラーク。

舞台はアメリカのTV局で、主人公はニュース番組のプロデューサーをしている38歳の女性である。
かつて敏腕として鳴らしたが、最近はパッとしない。チーフとの間がうまくいっていないせいだ。
その彼女だが、久々に面白そうなネタにあう。
ニューヨークの大オークションハウスで、ファベルジェのムーンエッグが600万ドルの高値で落札された、というのである。

ここで、ファベルジェのエッグについて説明しておく。
ファベルジェは、帝政ロシア末期に活躍した細工師である。
エッグは、卵形のエナメルで装飾した美しいオブジェで、金銀宝石で飾られ、さらに仕掛けがあって、エッグの中をひらくと、ダイヤモンドが飛び出す仕組みになっている。
これらのエッグは、ロシア皇帝が妻や子供など、親しい人に贈るプレゼントとして制作された。
その後のロマノフ家の悲劇によって、エッグも散逸。
しかし、美術品として大人気で、エッグが出現すると高値が付く。
すべてのエッグの行方がわかっていないことから、偽物がしばしば出現することでも有名なのだそうである。
そのエッグの未発見品「ムーンエッグ」が出現したので、オークションにおいてあれよあれよと値が吊り上り、なんと600万ドルになった。

しかし、チーフはこのニュースを「大したことはないじゃないか」と切り捨てる。
ファレルは落胆。他のテレビ局への転職を真剣に考え始める。

ところが、そこから事態は急転する。
ファレルは、ムーンエッグのホンモノを持つという老女に出会い、そのビデオ取材に成功。
ところが、その老女が何者かに襲撃され、アパートには放火された。老女は瀕死で命を取り留めるが、エッグは行方不明になる。
さらに、関係者が次々と死亡。
FBIも動きだし、エッグの贋作説が有力になっていく。真相はいったいどうなのか?
そして、ファレルは、最後に自らが、大ニュースの登場人物になる結末を迎えるのである。

評価は☆。
なんかのテレビドラマの脚本のようだ。
つまり、次々と事件が起こり、伏線がよく考えられている。
ただ、どことなく安っぽい感じがするんだよねえ。
日本でいえば、せいぜい2時間の「火曜サスペンス」みたいな感じだ(笑)。

本書で出てくる話としては、贋作をめぐる古美術界の話のほうが面白い。
古美術というのは、贋作を売っても罪にはならない。
「真作だと思った」でオシマイ、だからである。
ただし、贋作を真作と称して売り、それがばれたら、店の名前に傷がつく。
本書でもオークションハウスがそれをやったのではないか、という話になり、経営者が苦悩する。
それだけ、店の評判が左右する業界なのである。
だから、品物自体の真贋に迷ったら、必ず来歴を聞かれるわけだ。
それが名のある古物商で、それなりの値段であれば、真作だろうということになる。
古美術が好きな人が「買わなきゃわからん」というのは、実は鑑定眼という意味とともに、売買を通じて真作に「なっていく」という不思議な仕組みがあるからである、、、などと、門外漢に言わせると一刀両断の典型みたいな話ですなあ(苦笑)
いや、実際の古美術界は、もっと深い世界のようではありますが。

私は、白状すると、古美術なかんづく美術品の価値がさっぱりわからない。
才能がないのである。
わかる人はうらやましい反面、大変だろうな、とも思う。
こちとら、器なんぞより、中身さえ旨けりゃ別に文句はないので、、、無粋ですなあ(苦笑)