Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

日本を追い込む5つの罠

「日本を追い込む5つの罠」カレル・ヴァン・ウォルフレン。

著者はオランダ人ジャーナリストであるが、日米関係を30年もウォッチングし続けているそうだ。
そして自称「反米主義者」である。
その著者が、今、日本には5つの罠が仕掛けられているという。

1.TPP
アメリカの巨大企業が世界を搾取するための仕組みがTPPである。
これを受け入れると、日本の農村はたちまち崩壊する。
フランスのように拒否すべきである。
保護主義は国家として有効な施策であり、自由化は2国間で徐々に進めればよい。

2.緊縮財政
新自由主義」というのは宗教であり、富裕層が自分たちの富のために考えだした仕組みである。
緊縮財政を行えば、景気が悪化し、中間層が没落するばかりだ。
ギリシャやスペインのようになるのは緊縮財政のせいである。

3.脱原子力
太陽光発電はもっともクリーンで素晴らしいエネルギーである。
日本は脱原子力をはかるべきである。
なのに、一部の利権や右翼勢力のために、これが妨害されている。

4.沖縄の普天間移転問題
沖縄は日本にとって防衛上重要なのではなく、アメリカのアジア支配のために必要にすぎない。
日本の鳩山首相がなんどもオバマと話し合おうと呼びかけたのに、3度とも拒否された。
これは非常に無礼なことだ。
にもかかわらず日本人が怒らないのは、沖縄を日本人が差別しているからである。

5.権力への無関心
アメリカはかつてのアメリカではなく、欧州もEU瓦解の危機である。
北欧も、うまくいかなくなってきている。
日本は、諸外国に比べれば、まだマシなほうである。
日本人はアメリカにノーと言い、しっかりと権力者を見張るべきである。

だいたい、こんなところである。
思わず、うなった。感心したのである。
現状認識において、著者と私は大きな相違がないのであるが、その理由についての理解はまったく異なるからだ。
同じものを見ながら、まったく違う解釈をするのだから、人間とは面白い生き物であることよなあ。

私の理解は以下のとおりである。

1.TPP
確かに日本の農業は荒廃するかもしれないが、それはTPPのせいではない。
日本政府は今までも農家に特別な保護を与えてきた。カネもつかってきた。
その結果、大いに農業が振興したかというと、結果はご覧のとおりである。
あと10年で、日本の農業は後継者不足のために壊滅するだろう。
TPPが実現すれば、食品高騰を防ぐ多少の効果があるかもしれない。

2.緊縮財政
新自由主義と、スペインやイタリアの現状は関係ない。
政府にとっては、常にバラマキ財政が望ましい。そうすれば政治家は次の選挙で有利だからだ。
緊縮財政を行うのは、単にカネがないからである。ない袖はふれない。

3.脱原発
太陽光発電が普及しないのは、コストが高い割に電源としては不安定で損だからである。
この20年で効率は飛躍的に高まったが、それでも他の電源よりも劣っている。
特に陰謀があったわけではない。儲からないからである。

4.沖縄の普天間移転問題
沖縄が日本の防衛上重要なことは、大東亜戦争の沖縄陥落後をみればわかる。
本土は、ほぼすべての資源ルートを失って、石器時代に戻るところであった。
尖閣をみてもわかるとおり、話し合えばわかるはずの中共や韓国は、日本がスキを見せれば領土を取りに来る。
彼らが平和的に話し合いでこれらの領土をあきらめるというのであれば、防衛力は不要だが、なかなかそんな態度をみせてもらえない。
いっそウォルフレン氏に中共を説得していただければ、私も米軍基地はいらなーい、と叫んでもいい(笑)。

5.権力への無関心
かつて日本はアメリカとやりあって、食うや食わずになってもなお戦い、最後は原爆2発までくらって降伏した国である。
オランダ人に反米を説いてもらう必要などない。
戦争に負けて土下座したら、飯が食えるようになり、金持ちになってよい暮らしもできるようになった。
国際政治のプライドなんぞ、腹が減ってアメリカに戦争されるだけのものはいらん。
そんなものは食えないではないか。

まあ、だいたいこんなところである。
ううむ、媚米のsingle40の面目躍如、ですなあ(苦笑)

アメリカは横暴であり、一部の金持ちが支配し、戦争をしたがるとんでもない国である。
それは、たぶん著者と私の見解は同じであろう。
しかし、それからが違う。

アメリカをなめてはならない。
昭和16年に日本は対米開戦するが、その10年前まで、日米は親密であった。
アメリカが態度を硬化させたのは、支那において、日本が独自路線をとったからである。
アメリカは、戦争しようと思えば、いかなる難題を押し付けてもやるのであり、日米は実は太平洋を隔てているとはいえ「隣国」なのである。
中途半端な決着はなく、必ずぼろぼろになるまでやられる。
ベトナムイラクとは訳が違うのだ。

それゆえ、用心し、決して油断してはならない。
アメリカに警戒心を起こさせてはならない。
大物ぶってはならない。
細心の注意をしなくてはならない。
それが日本の対米外交の基本だと、私は思っている。
不満ならば、もう一度やるしかない。
結果は、しかし、わかっている。

そんなことがわからない日本人だと思われては、日本人もなめられたもんである。
まあ、それは日本がうまく欧米人に対してやっているということでもあるんだけどね。