Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

環境ビジネス 5つの誤解

「環境ビジネス 5つの誤解」尾崎弘之。

本書のタイトルにあるとおり、今や「環境」は市場になっている。
FITの導入をはじめとして、儲かる仕組みができてきたからである。
原発については、いまだ国論を二分しているが、現実に「環境」が儲かり始めた以上、宗教論争は無意味である。
逆に言えば「揉めれば揉めるほど儲かる」人が増えてきたのであるから、これはしばらく続くであろう。
実は、かつての原発誘致についても同じようなことがあった。
町は原発誘致で一致しているのだが、適当にゴネないと補助金を釣り上げられない。
仕方がないので、与党が裏で反原発派に支援をしていた。冗談みたいだが、本当の話である。
だから、野党だって、電源三法には反対しなかった。

まあ、それはそれ、として。

本書では、環境ビジネスについて「5つの誤解」を取り上げている。

1、クリーンエネルギーは、増やせば増やすほどエコである。
実際には、不安定な電力が増えると、それに対応する設備も必要になり(スマートグリッド)あらたに資源を消費する。
電源安定化のために火力が増えたりすると、温室効果ガスも増える。

2、電気自動車の時代はすぐそこである。
電気自動車の性能、特に航続力が問題。充電には容量だけではなくて時間もかかる。
すぐには代替できない。

3、太陽光発電はもっとも有望
実際にはFIT(固定価格買取)で市場を歪めることで成長しているが、そのぶんの負担は結局市民が背負う。
スペインのようにFITを中止しして市場がおかしくなった例もある。

4、バイオ燃料は環境に優しい
バイオ燃料自体は温室効果ガス中立だが、その製造過程または運搬過程で燃料を消費する。
従来燃料の節約分が必ずしも大きいとは限らない。

5、日本の水技術力は世界一
日本が優勢なのは逆浸透膜による海水淡水化などのプロジェクトで、産油国相手のビジネス分野である。
世界の水不足には、海水淡水化だけでなくさまざまな問題があるが、そのどれにも優れているわけではない。

まあ、だいたいこんなところか。
おそらく、おおよそ、上記のような事情は、多くの人にほぼ認識されているのではないか、と思う。

基礎的な事項の解説本として、評価は☆。

私見だが、太陽光ビジネスはあと1年で終わりそうである。
固定価格が@42の時代に、膨大な申請が出たが、そのうちのたった5%以下しか稼働していない。
今年の竣工分を合わせても10%ではないか。
今、経産省が調査を行っているが、その結果、期限が切られるはずだ。
永遠に42円単価で発電所ができるのを待ちます、などという法はないはずである。
すると、その後の38円が基準。ここで、だいたい現状、回収サイトが10年である。
FIT期間が20年だから、10年間の資金固定をして、リスク分と金利を割り引いての利益だから、現状の利回りでは20なし30%くらいではないか。
次に、さらなる買取価格の引き下げは避けがたいから、もっと下がる。
すると、ファンドがつかなくなる。ゆえに、もうダメであろう。
すでに、環境ビジネスが太陽光から次のネタにシフトしていくことは明白である。
太陽光パネルの生産も、技術的にはハードルが低いため、完全にコモディティ化し、人件費の安いアジア諸国に勝てない。
そんなものを作っていてはダメであろう。

ただし、エコエネルギーが細る、ということは、すでにないであろう。
独逸の例をみてもそうだが、太陽光発電初年度は電力輸入国に転落したが、それから逆に輸出国に転じている。
太陽光だけでなく、欧州で優勢な風力、小水力もフルに使った結果である。
もちろん、エネルギーコストは上がったが、それでもドイツはEUをけん引する経済大国であることに変わりはなく、特にGDPも落ち込んでいない。
エネルギー価格の高騰は企業にとっては厳しいが、もともと、独逸はエネルギーが安いから大国になったわけではない。
むしろ、独逸や東欧が新エネルギー市場を開拓して、新たな産業になってきている。
日本の事情も同様であるから、たぶん、これに続くであろう。
重厚長大型の軽水炉ではなく、小型炉に転換するという原子力政策の変更も含め、発電規模も小さく環境負荷も小さくという方向が世界の潮流だ。

ここにチャンスあり、だと思う。
我が国の立ち遅れが目立つ分野だが、だからこそ、チャンスがあると考える。

つまり、ようは、まず儲けることですよ、うん。