Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

闇権力の執行人

「闇権力の執行人」鈴木宗男

鈴木宗男といえば、「疑惑のデパート」といわれた鈴木宗男事件で有罪判決を受け、実刑判決を受けた政治家である。
仮出所後、地元の北海道で「新党大地」を立党。地方政党としては、圧倒的な支持を誇ると言ってよいと思う。
田中角栄とともに「塀の中からの選挙活動」を行ったことは、我が国の憲政史上に特筆されるべきであろうと思う。

その鈴木宗男氏が、いわゆる鈴木宗男事件が国策捜査だったとして告発本を出したのが本書。
本書によれば、国策捜査が行われた原因は鈴木氏が「知りすぎた」からである、としている。
「唯一の外務族議員」などと呼ばれ、鈴木氏は外務省と昵懇であるというイメージがあった。
本書によれば、それは昵懇などというレベルをはるかに超えて「ズブズブ」であり、鈴木氏は率直にそれを「間違いだった」と認めている。

それにしても、本書で繰り広げらる外務官僚の痴態は、まさに言語に絶する。
酒を飲みながらいきなり芸者さんにしなだれかかり、赤ちゃん言葉で話だし、そのまま店で沈没。
翌日、鈴木議員に付け回された飲食代が100万円を超えるというのは、いくら赤坂でもすさまじい。
さらに、女性外務省職員と不倫して、庁舎近くのマンションに囲い、夕方になるとそのマンションに消えて、夜中に戻ってくる。もちろん在業台とタクシー券を得るためだ。それが毎日。
在外勤務になれば、在外勤務手当(無税である)をしこたま溜め込み、さらには外交官特権で持ち込んだ自家用車を売りさばき、闇レートで換金して、これも私腹を肥やす。
飲み屋の座敷で尻の穴にローソクを突っ込み、火をつけたままはい回る。
こんな連中が外交をやっているのだから、それはろくな結果にならない。
ロシアの大統領に、氷漬けマンモスの日本公開のテープカットに来い、などと馬鹿な提案をする。日本の首相も来ないのに、どうしてロシアの大統領がのこのこ、マンモス連れてくるわけがあろうか。
馬鹿にするな、と不快になるのがオチである。
こんな連中ばかりだから、佐藤優氏を重用した。ほかに人材がいなかったのである。

検察権力に関する指摘は、佐藤氏と同じである。
実際に検察庁は人事面で法務省と深く結びついており、検察改革を掲げる法務大臣が就任すると、特捜部が動いて政治スキャンダルを出してつぶしてしまう。
検察が正義だと思ったら、大間違いだ、と。
彼らは、選挙で国民の審判を受けることもない。(ちなみに米国では、検事長は選挙で選ばれる)
肥大化した権力は、誰の手によっても絶対に阻止されることはない。
まさに闇権力そのものである。。。

評価は☆☆。
いまなお、衝撃の本である。

あの有名なリトアニアの「命のビザ」杉原千畝は、外務省内では省令に背いたとして、退官後も批判の対象であり続けた。
彼の名誉が回復されたのは、驚くなかれ、2000年になってからのことである。
一方で、我が国の国辱である真珠湾攻撃の直前予告に失敗したことで、誰も責任を問われない。通告が遅れた原因は、離任する職員の送別会パーティのため、翌朝、遅刻したからである。
なんでこれが責められず、杉原千畝は批判されるのか。

答えはひとつである。それが、外務省だから、である。