Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

決断できない日本

「決断できない日本」ケビン・メア

「沖縄はゆすりごまかし」の名人だと放言して総領事を辞任せざるを得なくなった人である。
佐藤優鈴木宗男などの悪者とされた人物の本(苦笑)は、案外おもしろいと思い、これも読んでみた。

まず、例の「ゆすりごまかし」発言はしていない、あれは左翼活動家やメディアのねつ造だと弁解している。
まあ、信じるか信じないかは、アナタ次第(苦笑)。
メア氏の主張は「辺野古移転は、移転した場合に、騒音や環境の悪化を忍ばねばならない辺野古住民に行われるべきものだ。にも関わらず、現状は移転受け入れをするかしないかで揉めており、そのために各種の補助が支出されている。これだと、いくらでもゴネればゴネるだけ金がもらえるではないか。移転したら金を払うのが筋だ」というものである。
この限りでは、メア氏の主張は「ゴネ得」の批判である。
ただ、日本の場合は、その他の公共事業などもそうなのだが、そもそも与党も「適当な反対勢力がないとカネが出しにくい」ので、裏では左派運動家などと手を握ってきた歴史があるのである。
最終的には、「やむを得ず」で権力の横暴反対を叫びながら、結局、それで食ってきた人もいるので、それ自体が一種の公共事業なのである。
米国人に、この本邦の文化が理解できなかったのは、致し方ないというべきか。

また、鳩山政権の迷走も厳しく批判している。
「最低でも沖縄以外」だが、地政学上の問題から考えて、沖縄に代わる土地はない。これは当然ではないか、という。

これもメア氏に申し訳ないが、日本の政治家は、軍事上の常識(少なくとも、米国であれば、政治家は最低限の軍事に関する見識は問われると思う)がないのである。
軍事知識に下手に詳しいと、石破氏のように「変わり者」扱いされてしまうのである。
政治家は、本当は自衛隊に命令を下す人であり、ズブ素人では国民に申し訳ないことになるはずと思うが、そうならない。
なにしろ、言霊の国なので「平和、平和」と唱えていれば平和が来る、という信仰がある。
逆に、軍事を語っていると、本当に戦争が来てしまう、というのである。
これも米国人に理解できない文化であろうと思う。

現実的に島しょ防衛を考えた場合に、沖縄以外の適地を見つけることは難しいだろう。
歴史を振り返っても、先の大戦で、実は日本の国内事情が極度に悪化したのは沖縄陥落後である。
日本の資源は、そのほとんどが、いわゆるシーレーンを通って運ばれてくる。
沖縄を失えば、日本はただちに干上がるしかない。
ミサイル戦争だから云々というのは、まったく当たらない。実際には、ミサイルで経済はなかなか壊滅しない。しかし、沖縄を失えば、確実に日本経済は壊滅するのである。

普天間基地についても「世界で一番危険な基地」ではない、という。もっと危険な基地は、世界中にゴロゴロある。
しかし、危険がゼロではないことは事実だ。
米軍が普天間に基地を作ったのは、当時は、そこがほとんど無人の野原だったからである。
そこに、ドンドン人が移住してきて、あまつさえ学校まで作った。
学校が危険だというのなら、はじめから学校を作らなければ良いし、あるいは学校を移転させれば良い。
ところが、反対派の人たちは、学校が危険なので基地が移転しろという。
基地と学校と、どちらを移転させるほうが簡単なのか、誰が考えても分かる話だ。
もしも学校がそんなに危険だというのなら、なぜ、もっと簡単な学校移転を急ごうとしないのか?
反対派の人たちは、自分たちの政治的主張のために、単に学校で学ぶ生徒を利用しているだけではないのか?

評価は☆。
米国人(わけても、率直な南部の人たち)と日本人の考え方に、いかに溝があるかを改めてしみじみと感じる本である。

私は、メア氏が率直な人物であるということは、本書を読んで理解したように思う。
しかしながら、日本の政治は、残念ながら、そのようにシンプルに出来ていないのである。

沖縄の普天間移転問題で、どうすべきか、正直言って私にもわからない。
ここまで、ぐちゃぐちゃに揉めてきたものを、すっぱり快刀乱麻を断つようにはいかないだろうなあ、と思うばかりである。
で、そうすると、えんえんとこの問題はつづき、メア氏が言うように、各種の税金が沖縄に注ぎ込まれることになるだろうと思う。
それも、一つの方法かもしれない、とさえ思う。

ただでさえ難しい問題を、さらに難しくしてしまった鳩山さんに関しては、まさに「宇宙人」としか、言いようがありませんけどねえ。