Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

国境の日本史

「国境の日本史」武光誠

日本における国境の成立過程を俯瞰した本である。
著者が国際法の専門家ではないため、中立的な立場を強調しながら、その立場が変遷してしまうところが面白い。
早い話が日本人の考える中立とは「あっちとこっちのナカをとる」ことなので、相手が過激な主張をすると、そちらに振られてしまう。
期せずして、とっても日本人的な本になっているところが面白い。

まず、本書冒頭に「固有の領土なるものは、国際法的には意味がない。ただの政治的用語である。国境を決めるのは、固有の領土概念よりは武力によって強い者が決めてきたのが事実」と述べる。
これは、たいへん正しい認識である。
そこから、日本の「辺境」が「国境」になっていく過程が語られる。
別に任那日本府の話にさかのぼらなくても(ちなみに、本書では「存在が否定されているのが近年の主流」とあるが、その後に「やっぱり存在したらしい」というのが主流になった)誰でもわかる話である。
鎌倉幕府に対して奥州藤原氏が独立政権であった、つまり「日本国」の成立過程であったという話などは、誰でもうなずけるところであろう。

ここから、話をすっとばして、日本の近代に入ってくると、世界は帝国主義の時代である。1920年代までは、少なくとも「侵略」は悪ではなかった。
というか、強国が植民地を確保するのは当然であり、それは未開国に対する恩恵である、と考えられていたのである。(欧米では)
しかし、世界のあちこちが植民地化されてくると、強国同士があっちこっちでぶつかることになる。それで国際法が成立したのである。
これは本書にはないのであるが、国際法(昔は万国公法といった)のもとは海洋法であり、つまり大航海時代になって初めて登場した概念である。
それぞれの国の領土でない海の上では、いったいどのように各国ごとのルールを定めるか?当然決める必要が出てきたので、それがそのまま陸上に適用されて国際法になっていく。
で、中共が主張するように「欧米が勝手に決めたルールだ」という話がでてくるのである。
中共は国境紛争を「2国間で解決すべき」と国連なんざ不要です発言を堂々と繰り返す常任理事国というわけのわからん存在なのであるが、その根底には「国際法なんざ御免ですわ」があるのである。
著者も、欧米の植民地支配の歴史を振り返りつつ「一理ある」スタンスである。

で、ここから導き出される結論は、ただ一つである。
誰でも気が付くことであるが、もしも国際法によらずに国境を決めるのであれば、なんによって決めるのであるか?
著者自身がいみじくも指摘したように「武力」しかないのである。
であれば、尖閣国際法上の云々(あきらかに日本有利だが)によらず、武力で防衛せねばならない。
もっとすごいのは竹島であって、著者は日本の竹島編入過程が第一次日韓協約の後であり、韓国の主権制限下であった点から韓国側の主張も「一理ある」としているのであるが
1.もしも武力支配が国境画定の根拠であるなら、日本の行為は特に非難すべき根拠もなくなる
2.その後の韓国による竹島侵略について、ポツダム宣言の範囲下の解釈問題だとしているが、実際には単なる武力侵攻である。そもそも、ポツダム宣言そのものが、日本の軍の敗北という武力による結果である。
3.だとすれば、話は簡単で、竹島は武力で取り戻すほかにない
という馬鹿でも考え付く結論を省略してあるのは、とっても残念である。

おそらく意図的であろうが、韓国の竹島侵略が明らかな「武力侵攻」であった点を書いていない。
「武力」こそ国境画定の根源、という著者の主張によれば、これほど「もっとも」な話はないはずである。
とりあえず「ナカとって中立」ゆえに、著者自身の到達した結論を放擲してしまったのは惜しまれる。
インテリとしては、ウルトラ右翼といわれる主張を書きつけるのはためらわれたのであろうが、著者自身の論理を透徹すれば、おのずと結論は見えるはずである。


評価は大サービスして☆。
たとえば、韓国による竹島支配を「実効支配」と書くなど、基本的な国際法の知識が抜けているのは、やはり痛い。
平穏な支配でなければ実効支配と呼ばれないのであり、民間人(漁師)の死傷者44人死者5名を出した竹島侵略を、実効支配とは国際法上は認められないであろう。
韓国の失敗は、竹島を武力支配したことそのものであって、それだけで国際法廷では実効支配根拠として不利なのである。
「今、実効支配しているので裁判に出てこない」と言われているが、実は違うのだ。
「出たら負け」なのである。
考えても見よ。武力侵攻して支配してしまえば認められる、というのであれば、裁判も何も必要ないのである。
すべての裁判は「法の支配」を貫徹するために行われるのである。なぜならば、法の支配そのものが法益(法的安定性)をもたらす、と法律家は考えるからだ。
韓国自体の司法の有様をみると、法律家の支持を得ることは出来ないだろうねえ。

本日、ようやく加藤産経新聞記者に帰国許可が出たようである。
前代未聞の「報道の自由」を無視した行為も、国際社会の批判に耐えきれなくなってきたものであろう。
誰が見ても、土人の所業である。

実力でいえば、自衛隊竹島を奪還するのはワケもない。
しかし、このまま、ずっと喉にささったトゲにしておくのも、悪くはない。
良くも悪くも、かかわるとロクな目に遭いませんからなあ。。。