Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

被害者は誰?

「被害者は誰?」貫井徳郎

軽いタッチの連作短編集である。叙述ミステリのトリックが秀逸。

主人公は、売れっ子作家で顔もスタイルも最高で本人曰く「天才」なのだが、性格は最悪な探偵役と、探偵に翻弄されるワトソン役の後輩刑事である。

豪邸の庭に埋められていた白骨死体。
すっかり風化が進み、歯列も壊されいて、身元確認ができない。
手がかりは、逮捕された豪邸の主が書いていた手記だけ。
犯人は、豪邸の主以外にありえないのである。
手記の中には、主が恨みを持っている相手との経過が克明に記されている。
さて、いったい庭に埋められて被害者は誰でしょうか?

というようなストーリー展開で、作中作ともいうべき手記を読むことになる。
しかし、この作中作というのがトリックなのである。
そこで、ズバリ、犯人は?

まあ、そんな話が4編。
軽く読めるし、結構ひねったトリックであって、なかなか楽しい作品集である。
貫井徳郎といえば「慟哭」という大名作があるわけだが、ああいう本格とは違う面白さだ。
いつもいつも「21世紀読書史上、空前絶後の大トリック!そして深い人間ドラマ!!」などというやつばかりでは、くたびれるではないか。
まあ、こんな作品もよいなあ、と思った次第。

評価は☆である。

私は、今は、短編をあまり読まない。
かつては星新一ショートショートにはまったし、アーウィン・ショーの書くようなNY派の短編は大好きである。
おそらく、彼らに影響を受けた(だろうと思う)片岡義男なんてのも、前は読んだなあ。
SF短編でも「冷たい方程式」なんて、永遠に残る名作かと思う。

どうも、長編よりも短編のほうが、小説の出来不出来が激しくでるような気がするのである。
素晴らしい短編は、非常に少ない。
単に「物足りなさ」が残るだけの作品が多いような気がして、手が伸びなくなったのである。
ただ、こういう「連作短編」という形式だと、その「物足りなさ」が緩和されるのか、あまりハズレだと思ったことがない。

単に、私が昔よりもしつこい性格になったからかもしれない。
ほかのことは、淡泊になりますが(苦笑)
小説とは、ありがたい道楽だと思う次第ですなあ。