Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

これは正解

ソフトバンクが、英国のarm社を買収した。
米国の落ちこぼれ携帯キャリアを買ったときは「大丈夫かいな?」と思ったが、今回はおそらく、大正解である。

armは、まさに知られざる優良企業である。
とはいえ、いわゆる「組み込み」をやっている人たちの間では、もはやデファクトスタンダードなので、駆け出しのベンチャーとはモノが違う。
armアーキテクチャは、省電力で小さいのが特徴なので、今では携帯電話、スマホ、MP3プレーヤなどのデジタル家電には、すべて採用されているといっても過言ではない。
というか、よく相手が売ったものだと思う。

おそらく、相手が英国企業であることが幸いしたのである。
EU離脱決定の影響で、ポンドはダダ下がり、一方で円は上がった。
買収を仕掛けるには絶好のタイミングであった。孫会長は、まさに「さすが」だと思う。
私は、孫さんの経営手腕をあまり評価していないけれども、この投資家としての勘の良さは、天才的だと思う。

ソフトバンクは、傘下の有力企業の株を次々と売却して手元資金を増やしていたが、まさかまさかの大型案件があったわけだ。
おそるべしである。

英国にとっては、EU離脱で外国企業が逃げていくという恐れを払拭する大型投資で、時期的にも歓迎せざるを得ないであろうと思う。

日本でも、TPP反対とか、タックスヘイブン規制に絡んでいっそ海外マネーすべてに税金をかけろなどという寝言があるようだが、まったく経済活動を理解していないのではないか、と思う。
そんなことをやれば、国内企業が外資を買収することは困難になる一方、国内企業の価値が国際市場的には下がりまくるので、いくら政府が規制をかけても、ますます国内資本の海外流出を招くことになる。
誰だって、自分の会社の価値が下がっていくのを指をくわえてみているわけにはいかないのである。

日本政府の借金が1000兆円あろうと、貿易赤字がいくらあろうと、円がびくともしないのは、何を隠そう世界一の対外純資産があるからである。仮に円が破たんしても、あくまで日本国内での処理スキームにとどまり、海外から見た場合には影響は限定的だ。自由貿易体制のもとで、直接間接に海外資産を獲得しつづけてきたし、実は今も海外純資産は増え続ける一方なので、世界からみた日本円の信頼はゆるぎない。
もしも仮に、海外へのマネー流出を規制すれば、当然に日本の海外資産の獲得ベースが逆転して、逆に海外流出が基調になる。
円が安くなって輸出企業は短期的に喜ぶかもしれないが、海外資産を国内に還流させることもできず、やがて日本経済は大幅な退潮に至るはずである。
国内の雇用を守り、格差の解消をするのは大事だが、そのために経済そのものを窒息させては元も子もない。
雇用政策であれば、今のアベノミクスによる金融緩和が効果的である。
所得格差の解消には、基本的に累進課税(または相続税)を見直せばよいのであって、海外へのマネーの移動そのものを規制してはいけない。

逆をいえば、armを失った英国は、よい我々の見本になるということである。
ポンドが、逆に海外の優良企業を手に入れるために、有利なポジションにあるとは、とても思えない。
英国民は、排外主義で「内向き」になった結果、まったく期待と反対の結果を手に入れることになるのではないか。

移民問題では、ドバイの制度などがとても参考になる。
EUの制度が理念先行のひどい出来だったから、英国は短気を起こした。
もうちょっと、成功している国の例を謙虚に学ぶべきであっただろう。

ところで、たぶん10年後。
ソフトバンクの本業はarmになっているだろうと思いますな。
今までは、ようは「販売店」だったのである。流通業だ。いけいけどんどんの(笑)。
だけど、今回は違う。川上のキーデバイスそのものを手にしたわけなので。

実に正解だろうと思いますね。