Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

現代デフレの経済学

「現代デフレの経済学」斉藤精一郎。

初版は1998年だから、今からすでに10年以上前になる。
で、日本政府は2009年にようやく「デフレ宣言」をした。
なんのことはなく、つまりはバブル崩壊以後「失われた20年」となり、えんえんとデフレ不況に落ち込んでいるわけだ。
本書は、1998年という、いまだ「バブル崩壊」の記憶も新しい時期に、いち早く「デフレ」到来を告げたもので、当時ききなれない「デフレ」についての解説本である。
今日問題となっている「デフレスパイラル」に関しても、そのメカニズムが説明してある。
また、デフレ経済下で起こることとして「2極分化」が必然であることをあげている。
本書の予言によれば「一億総中流は、これから崩壊するだろう」これ、見事に的中と言っていいんではなかろうか?

著者は、デフレ経済の原因として、ベルリンの壁崩壊による世界ベースでの供給過多をあげている。
ようは、需要不足なのである。
しかし、バブル崩壊後、30兆円を超える財政出動ケインズ政策)がとられたが、目に見えるほどの効果がなかった。
その原因を、著者は、不良債権問題による資産デフレが原因である、と分析する。
クルーグマン流の調整インフレについては、検討の余地はあるとしながらも、かつて中央銀行がインフレの馴致に成功した例はないとして、「調整」インフレの範囲を超えてインフレが亢進するリスクを挙げており、否定的な見解となっている。

評価は☆。
デフレ経済についての入門書としては、いまだに価値を失っていないものと思う。

さて、本書が出てから小泉政権が登場し、徹底して不良債権処理を行った。
不良債権問題から生じる資産デフレ」を解消し、金融機能を復活させ、構造改革によって生産性をあげる、という成長戦略であった。
おりから、アメリカの住宅ブームによる好景気も影響し、大胆な歳出削減策にも関わらず、景気は上向き。日本経済は一時的に活気を取戻し、政府の財政もプライマリーバランスの回復まであと一歩まで迫った。
しかしながら、その後、サブプライムは崩壊、リーマンショックが到来する。
もともと、ケインズ的な政策をとる麻生政権は、この難局を乗り切るため、大規模な減税、財政出動を合わせて実施。
おかげで、日本経済は奈落のふちに落ちるのを回避した。
しかし、その結果、世界の余剰資金が日本に避難し、かつてない円高を呼び、輸出を中心とした日本産業は大打撃をこうむるに至る。
にも関わらず、財政危機からドルは増刷され、ユーロは崩壊寸前。かろうじて円が支える構図は変わらず、依然、円は高止まりしたままだ。
加えて、過去の数次にわたる財政出動は、日本政府の財政をますます窮地に追いこむ結果となり、国民はすでに「財政出動のあとの増税」を見越して消費を手控えるという「逆ケインズ効果」に陥っている、と思う。
本書で指摘するように、現代のシステムでは、かつての昭和デフレのように破壊的な不景気を防ぐことはできるが、その代わり、じりじりと進んでいくデフレスパイラルを止めることはできないのである。

日銀が金融緩和をしてマネーサプライをいくら増やしても、そのマネーは民間に循環しない。
日本の金融機関は、そもそも事業の成長性を判断するノウハウを持たない。
自己資本比率規制があるから、不良債権化する可能性のある貸し出しをしない。
といって、好調な企業が、銀行に資金を頼るわけもない。
かつては、それでも土地神話があったから、多少のリスク案件であろうとも、土地さえあれば資金を供給した。
今は、それもない。
一方で、預金金利はタダ同然の水準である。したがって、何も考えずに国債を買っておけばよい、となる。
日本の国債は国内で消化されているから大丈夫だというが、実態は、外国が相手にしない低金利で、しかし資金がだぶついているから、国内銀行が買い進むだけの話である。
よって、新たな成長産業は育成されず、いつまでも株価も上がらず、政府は財政出動を繰り返し、その資金を国債に頼る。
以下、その繰り返し(笑)

こんなバカな経済があろうはずもないが、現実がそうなのである。
で、そのばかげた動きを止めようとした郵政民営化法案を、事実上修正となり、それに議員がみんな賛成しちゃうのである。

私は、今、なんとかして海外脱出できないかと、真剣に考えている。
人は難しいが、しかし法人は簡単に海外に引っ越せる。
日本は好きだが、好き嫌いとは別であるように思うのだなあ。