Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

天下り酒場

天下り酒場」原宏一。

短編集である。この人の作品は初めて読んだ。

表題作の「天下り酒場」は、酒場に県のお役人が天下ってくるのが話の発端。
役人も、最近の天下り先には苦労しており、どこでもいいから、というので居酒屋「やすべえ」に天下ったというわけ。
この役人、いきなりパソコンで原価管理を開始し、県の役人連中が押しかけてきたのもあって売上も向上、居酒屋「やすべえ」は見事に黒字転換。
気を良くした酒場の主人は、次の役人の提案「2号店出店」に乗る。
これも成功。
さらに、会社法人にして、さらなる天下りを県から受け入れて、県の補助金もゲットし他店舗展開。ついにはセントラルキッチンまで作ってしまう。
順風満帆と思われた「やすべえ」だが、思わぬ陥穽が待っていた。
しらぬ間に、会社法人の「やすべえ」は第三セクターになっていたのである。
つまりは、県の天下り先および裏金造り機関の存在に成り果てていたのだ。
ことの顛末に激怒した「やすべえ」社長のヤスだったが、そこで食中毒事件を仕掛けてられ、あえなく辞職の憂き目にあう、、、という話。

短編だが、そのほかも歯磨き屋だの資格ファイターだの、風変わりな職業ばかり。
思わずニヤリとさせられる。


たいへん面白い。評価は☆☆である。
奇想天外なお話が、大真面目に展開されていく様子は、かつての星新一ショートショートを彷彿とさせる。
本当に面白いお話は、嘘である、ということを実感。
こういう駄法螺は、そりゃもう、大好きでねえ。

話を盛る、などと最近の人は言うようですが、それは大事なことである。
なにしろ、ほとんどの人は、相手の言うことなど「話半分」に聞いているものである。
多少は盛らないと、なかなか伝わらん、というべきであろう。
とはいえ、民主党のように、大見えきって話を盛りまくった挙句、言ったことの半分はおろか、何分の一も実現できずに、信用失墜して滅亡しちゃう例もあるようですが。

大法螺を吹くのは、フィクションの世界に限る、ということでしょうなあ。