Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

縮図

お盆休みは故郷で過ごした。
祖父が亡くなって35周年であるし。墓参りもしたかった。

父は、すっかり年老いていた。
84歳であるから、仕方がない。
ただ、今年の正月にも帰ったのだけれども、そのときよりも、明らかに認知症の症状が進んでしまった。
母親によると、通っていた病院の担当医が医局に帰ってしまい、かわりに若い先生が来たのだが、投薬を変えたのがいけなかった。父には合わなかった様子で、昼間から居眠りをして、夢遊病のような症状を起こしたという。
もとの薬に戻して少し落ち着いたが、その間に、すっかり症状が進んでしまったという。

父に話しかけてみると、「ああ」とか「うん」という返事はするものの、それ以上の会話が出来なくなってしまっている。
ごく希に、何かを話し出すことがあるが、目の前の出来事とは関係のない昔の話をしたりする。
母親いわく「2~3歳の幼児のよう」だと。
そのとおりである。

しかし、それでも少しは歩いたりはする。
それはいいのだが、外出すると、自宅が分からなくなる。
補聴器をいじるとなくす。1個10万円である。たいへんだ。
目が離せないので、母がつききりで介護している。
入浴も着替えも一人では出来ない。
食事中にも眠り込んでしまうので、食事に1時間以上かかる。

父の状態も気になるが、それよりも介護している母のほうが気になる。
老老介護というが、母だって後期高齢者である。
幸い、近所に弟夫婦が住んでいて、それだけが頼りだが、しかし祖父の世話を弟の嫁さんにやってもらうわけにもいかない。
このままだと母も共倒れになりそうな気がするので、父にはかわいそうだが、いっそどこかの施設を探したら?と話をしてみたが、それも結構カネがかかる。
今や、そういう施設入居の前には資産調査があり、預金1000万円以上あれば、利用料が跳ね上がる仕組みである。

母親いわく
「うちは自営なので、老後を考えて若いときから節約してカネを貯めたら、いざとなると利用料が高い。若いときにパチンコ三昧してカネのない人は安く入居できるし、生活保護でも受ければ無料である。
いったい、なんのために節約したんだろう?」

こういうことがあるから、老人はお金を使えないわけである。
老後資金はほぼ介護関連で消費される。
その介護は、もっとも不人気な商売で、人手不足の代表であり、真剣に外国人労働者の大量移入が検討されている。
もっともお金が流れ込む分野の労働者なのだが、心身ともにもっとも重労働で、かつ、賃金も高いとはいえないからだ。最大の産業になるかもしれないわけだが、残念ながら、生産性は低い。

こうして、国民の資産1400兆円が消えていくわけだろう。
国家財政規模は年間100兆円に迫る勢いであるが、ほぼ老人福祉と介護で予算は詰められている。
そのうち、2050年には、認知症は700万人突破するだろう。
いっておくが、認知症は我が母のごとく、24時間誰かが監視していないと、何をするか、わからないのである。
GPSを持たせるなどというが、認知症の人がスマホを「常に持ち歩く」ことが出来るわけがない。
補聴器すら危ないのだから。

昨日は、我が国の敗戦の日である。
私は、わが父母を罪滅ぼしに少し手伝いながら思う。
これが日本の未来だ、これが縮図だ。
ついに子供を持てなかった自分を省みて、これも戦後世代のもう一つの敗戦の図なんだろう、と思った。