Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

反資本主義の亡霊

「反資本主義の亡霊」原田泰。

最近、「日本終わった論」が盛んになっている気がする。
遙か昔に、GDP中共に抜かれてしまったし、今や誰もジャパンアズナンバーワンとは言ってくれない。
観光客は増えているが、ほとんどが東アジア諸国からの客である。
銀座の爆買いも、支那人が主役で、彼らが来なくなったら途端に小売業の業績が下降した。
それどころか、日本を代表する製造業において次々と品質管理体制の不備が露呈している。
おまけに、低成長はこの20年変わらないし、日銀がいくら頑張っても、一向にデフレは脱却しない。黒田総裁みずから、2%のインタゲは難しい、と認める始末。
そして、2025年には、ついに団塊の世代後期高齢者に突入。日本は世界未曾有の超高齢化社会になるわけで、一方、少子化の波はとまらない。
これじゃあ「日本終わった論」が出てくるのも仕方がない、というわけだ。

その反動だろうと思うのだが、テレビではやたらと「日本凄い」「日本人で良かった」のオンパレード。
自虐も気持ちが悪いが、浅薄な自画自賛特定アジアお家芸であるはずで、日本人がこれじゃあアカンわ、と思う次第。

同じように考える人たちも多い思うのだが、その人たちがしばしば口にするのが「反資本主義」である。
いわく
「強欲資本主義の限界」「グローバリズムの悪が招いた衰退」「ユダヤ金融資本ロスチャイルドの陰謀(苦笑)」etc、、、である。
どうして、世の中でうまくいかなると「反資本主義」が流行るのだろうか?

そんな疑問を解こうと考えて読んでみたのが本書なのだが、残念ながら、上記の疑問に対する回答はなかった。
本書で主張されているのは
「冷静に考えよう。資本主義は、大局的にみれば成功している。資本主義の発達した国の貧乏人のほうが、途上国民よりも豊かではないか」
「庶民の暮らしは劇的に向上したが、それも資本主義の成果ではないか」
社会主義がもたらした失敗のほうが、遙かに大きいのは明らかではないか」
ということ。
そりゃあ、そうなんである。
つまり「資本主義が完全無欠の最上のシステムとは言わないが、今のところ、それより優れたシステムはない」
というオチになるわけだ。


というわけで、評価は☆。
後半の日本が大東亜戦争に踏み込んだくだりの解説は、ちょっと強引かなと思う。
戦前の日本が、特に資本主義において遅れていたとは思わない。
ただ、官僚化した軍人が、己の栄達を求めて戦争を起こしたという指摘は、一部当たっているとは思う。
役人は自己増殖を目指すし、それが正義だと信じている生き物である。

また、中央銀行の役割の重要性は本書で指摘される通りだが、それだけではない。
アベノミクスによって、日本はかなりのリフレ政策を行ったが、未だに2%のインフレ目標を達成することはできていない。
ただし、好影響があったことも事実だと思う。(出口の難しさ、今後何が起こるかという問題は大いにあると思うが)

経済学の本を読んで感じることだが、正直なところ、宗教と学問の区別がないように思う。
マルクス主義はドグマであるが、主流経済学(自由主義)も「・・・なるはずだ」というだけであって、その裏づけとなる実証データが不十分である。
ケインズもしかり。
神学と経済学は、たいして違いがない。
理論は(その想定する自然数体系の中では)無矛盾に成立しているが、それが現実を保証するものでも何でもない。
私は、信仰心が足りないんでしょうなあ。


それはともあれ。
私は「どうしてこうなったか」について考えて、それなりに結論めいたものを見いだした。
それは、そのうち、また書くとしよう。