Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

黄金旅風

「黄金旅風」飯嶋和一

舞台は江戸初期の長崎、まだ二代将軍秀忠は存命であるものの、すでに三代将軍家光が就任した時代である。
長崎は家康以来の朱印船貿易の拠点として栄えていた。
当時の長崎代官はカピタンと呼ばれた末次平蔵である。
当時も今も台湾は東南アジアとの貿易で重要な中継地である。
ここにオランダ人はゼーランジャ城を築いていたが、ここで平蔵配下の浜田弥兵衛が事件を起こす。
長官のノイツが弥兵衛を監禁したのである。中継税をめぐるいざこざが原因だった。
いったんは条件を呑んで開放された弥兵衛だが、そんなことで大人しくなるような男ではない。
逆にノイツを監禁し、和平の条件として息子達を日本に連れてきて監禁、その上、長崎のオランダ商館を閉館という強硬措置をとった。
平蔵は、すでにオランが力を失って単に「中抜き」しかしていないこと、東南アジアの覇権はイスパニア(スペイン)に移りつつあることを
日本から見れば、単に中継地にあるだけで「中抜き」をするオランダはすでに邪魔な存在である。
強硬な態度に出た平蔵の狙いは、あくまでも朱印船貿易でより多くの利益を上げることであった。
ところが、その平蔵がある日突然、何者かに暗殺される。
後任としてやっきたのは竹中重義である。
長崎の朱印船貿易のもたらす利益は莫大である。重義は、幕府中枢にカネをばらまいて、自分が長崎奉行になれるように運動した。そして、何かと目障りな長崎代官の平蔵を始末した、というわけである。
平蔵のあとを次いだのは、不肖の息子として有名な平左衛門だった。
しかし、この平左衛門が大器量の人物で、のちに江戸幕府史上最大の朱印船貿易家と呼ばれることになるのである。

竹中重義のバックは大御所秀忠であり、重義はルソン出兵を行って現地を占領しようと考えていたのだ。
秀忠らは、貿易の収益に目がくらんで、これを黙認するつもりだったのである。
さらに重義はキリシタン弾圧に名を借りて苛政を布く。出兵にかかる経費を捻出するためである。
平左衛門は唯々諾々と重義に従うふりをみせていた。
それが秀忠没後、豹変する。
幕府に重義の不正を訴え出たのだ。
重義は失脚、ルソン出兵は未然に防がれることになった。。。


飯嶋和一に駄作無し、というのが出版社の惹句らしい。
たしかに、たいへん面白い小説である。
長崎は平左衛門以降、ついに鎖国が行われることになり、オランダとポルトガルという新教国とだけ細々と貿易が続くことになる。
史上最大の朱印船貿易家と言われた平左衛門自身が鎖国政策を招来することになったわけだが、その真意はルソン出兵を防ぐためだった、というのが著者の推理であろう。
当時のイスパニアは世界の強国であり、ルソン出兵など行っても日本が戦線を維持できるとは到底考えられず、むしろ東南アジア他国のように侵略の悲劇を招くだけだったろう。
ただし、日本の後ろには、イスパニアが貿易したい国はない。まさに極東の「どんづまり」が日本なのである。
平左衛門は極めて理性的に、東アジア情勢を把握していたといえる。

戦争をしないで貿易をすれば国が富むのは当たり前のことだ。
我々の夕餉の食卓も、もしもすべて独力で揃えようとすればロビンソン・クルーソーの苦労をしなければならない。
人類がほかの動物よりも優れているのは、この交易と分業の成果による。
道具をつかう猿やカラスはいるが、貿易をする猿はいないのである。
トランプ大統領自由貿易の価値が分かっていないようであるが、アタマの中身は猿なみということだろうかね(笑)
国境に壁を立てると国が富むのであれば、日本が昔やったように、州境県境にもすべて関所をつくればどうか?
さらに、もっと国が富むはずではないかね?(爆笑)

こんなカンタンな話がわからないわけだから、なんとかにつける薬はないわけですなあ。