Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

火焔の鎖

「火焔の鎖」ジム・ケリー

英国の地方を舞台にした小説である。ミステリという割には謎自体は大したことがない。人間ドラマというべきか。

約30年前に、米空軍の輸送機が農場に墜落した。この地方には米軍基地があるのだ。
(英国にも米軍基地がある。沖縄の専売特許ではないんですな)
折悪しく、農場にいた女性マギーとその幼い赤ん坊が事故に巻き込まれる。
マギーは九死に一生を得て生き残るが、赤ん坊は死亡。一方、輸送機に退役のため乗っていた一家は死亡したが、幼い子供が生き残った。
ところが、マギーは氏の間際に、奇妙な告白をする。事故の際に、とっさに乗客の死んだ赤ん坊と自分の息子をすり替えた、というのである。
なぜ我が子を手放すようなことをしたのか?

このニュースを聞きつけた地元紙の記者ドライデンは、この遺言の調査をするかたわら、拷問されて死亡した男の死体を見つけてしまう。その場所は大戦時のトーチカであり、死亡の理由は極度の脱水と毒物だった。
トーチカは犯罪者がしばしば利用する場所になっており、バーの娘が拐かされてポルノビデオを撮られた場所であった。
バーのマスターは、娘の敵を取ろうとして行方不明になる。
トーチカに出入りする謎の兵士は、マギーがすり替えた息子の戦友だった。
アメリカ人として育った息子は、米軍兵となって、この町の基地に赴任していたのだった。
このトーチカの犯罪が、実は不法侵入の外国人たちとつながっていることがわかってくる。


評価は無☆。

うーん、書き出しはすごく「何かが起こりそうな」感じが凄くあって良いのだし、次々と起きる事件の展開も悪くない。
サイコパスなトーチカ内の拷問の描写もそれっぽくてワクワクする。
しかし、である。
それらの事件のたたみ方がメタメタ。
なんだ、そういうことだったの?というほどの納得もないのだ。
ただ、こうでした、ふんふん、でお仕舞い。
そりゃないよ、としか思えない。
おかげで、すごく散漫な印象を受ける。何が描きたかったのか、最期まで分からないし、読み直す気力もわかない。

わかるのだが、現実というのは、得てしてこんなものだ。
あっと驚く真相なんてありはしない。「なあんだ」ということが圧倒的なのだ。
しかし、である。
ことは小説である。
「現実には有りそうもないが」しかし小説には出来るのである。
そうじゃなかったら、ノンフィクションでいいではないか。
小説で、フクザツに積み重なった人間ドラマをやられてもなんだかなあ、としか思えない。
ちょっと表現形式を間違えたんじゃないかな。
もしも人間ドラマが書きたいなら、もってまわった謎はいらないよ。

まあ、そういうわけで。
休日をつぶして読んだ小説が、てんでダメなこともあるのである。
それでも、時折雨がぱらつくような日に、家の中でゆっくり猫に寄り添ってもらいつつ、読書できるのは幸福なことである。
なかにはハズレもあるさ。

小説が期待はずれであっても、だからといって不幸なわけではない。
大したことはない。だって、たかが小説ではないか。
そう思いながら、次の本に手を伸ばすわけですなあ。