トヨタ社長が、政府の2050年温室効果ガスゼロ目標に苦言を呈した。少なくとも現状では、EV(電気自動車)は生産工程でガソリン車よりもCO2を発生する上に、肝心の発電で火力発電を多用しているのだからCO2削減にはならない、自動車業界のビジネスモデルが崩壊するというのである。
この発言は、真実をついている。
しかし、経営者というのは、学者ではない。真実を言ってカネがもらえるのが学者である。経営者は、企業を環境に適応させて成長させなければならない。
わかりやすく言えば「真実はどうでもいい」のである。
中国も欧州もEVに切り替えることを表明している。アメリカもカリフォルニア州では決定済だが、あとの州もそうなる。なぜかというとバイデンが「グリーンエコノミクス」を表明しているからだ。
中国の自動車産業は、逆立ちしても日本より勝るエンジンを作れない。欧州もアメリカも、日本のトヨタより性能のよいハイブリッドを作れない。
で、彼らはゲームのルールを変えることにした。
トヨタは、日本で年間340万台、海外で560万台くらいを売る。すでに海外売上のほうが多い。欧米や中国でクルマが売れなくなれば、社業が一気にかたむく。どっちが正論かを論じるのはヒマな学者がすればいいことである。トヨタの社長がやるべき仕事は別だろう。
資本主義は、つねにフロンティアがなければ成長しない。フロンティアとは、カネを突っ込んでリターンを得る対象のことである。市場ともいう。
バイデンはグリーンエコノミクスと言っているが、つまりはこの分野にカネを突っ込んだらリターンを得られるようにすると言っている。
それが何でもよいのである。チューリップでも、ITでも、オイルシェードでもいい。そこにカネを突っ込んで(投資して)利益を得られる対象であればいい。もしもないなら、政治の力で作るまでの話である。
グリーンも、もちろんそういう対象の一つなのである。
正論など、なんの役にも立たないし、それが資本主義なのだ。
もちろん、共産主義という正論はもっと「やくたたず」だったので、「それが資本主義の欠陥なのだ」などという話を信用してはいけない。
他人のことを言う資格はないのである。
ぐだぐだ言わずに頑張るしか、どのみち方法はない、ってことですな。