Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

集団自決の真実

「集団自決の真実」曾野綾子

かつて「ある神話の背景」というタイトルで出版された本の復刊である。
沖縄の渡嘉敷島で、大東亜戦争末期に、島の守備隊長であった赤松大尉の命令によって島の住民300名余が集団自決させられた、という説が一般に行われていた。
これに対して、曾野綾子氏が、実際に現地踏査を行い、徐々に隠された真実に迫っていく。

先日、ついに島の生き残り住人が重い口を開き、
「集団自決に対して、軍の命令はなかった」
「戦後、自決者の生き残りが厚生省に恩給を貰おうと掛け合ったが、勝手に自決したのであれば戦死者の寡婦にはあたらないのでダメだと言われた。しかし、自決が軍の命令であれば恩給の対象となるという」
「赤松大尉に相談したところ、自分が命令を出したことにすれば良いという話になった」
「この措置によって赤松大尉は汚名を終生着ることになったので、申し訳ない」
と証言されたのである。

本書を読めば、すでに事件の真相は充分に指摘されていたことがわかる。
マスコミによる集団自決の記事は、すべて沖縄タイムス社の「鉄の暴風」の剽窃であること、現地を踏査したところ、なんと沖縄タイムス社の取材を受けた者が生き残った関係者にいないこと(!)が判明したのである。そして、曾野氏自身が、恩給の給付条件の問題に触れて「生き残った者は行きていかねばならない、それがこの事件の背景にあって、そのようなことにしようとなったのではないか」と指摘している。

赤松隊の生き残りは、曾野氏の取材に対して「自決せよなどという命令は出ていない、それはハッキリ言える、しかし真相は言えない、言えば大変なことになる。」と何人も証言している。なかには「この際、本当のことを言ったらどうでしょうか」という者もいたようであるが、赤松大尉は自決命令を否定したものの、真相については沈黙を守ったまま死んだ。

「鉄の暴風」を孫引きしてでっち上げられた書には「赤松大尉は終戦で山からでてくると、他の兵隊は餓死寸前なのに、自分だけは肥え太り、女まで連れていた。この人物が島民に自決を命じた恥知らずである」と書いている。それを反戦教育のサブテキストに使っていたわけである。もちろん、現地の人の証言は何もない、「むしろ痩せていた」当たり前である。
しかも、自決の風景の孫引きぶりは、これが歌謡曲なら盗作裁判で絶対負けといえるほど「そっくり」である。マスコミの正義だの良識だの程度がよくわかる。

特に現地踏査も全くしないで、赤松大尉を名指して「極悪人」呼ばわりした大江某というノーベル賞作家については何をか言わん。
ついでだから言うておくが、この人物がいかに品性下劣であるかは、村松友視氏が畏友ヤスケンのことを書いた「ヤスケンの海」に詳述されている。ヤスケン氏が、まったく個人的に投稿していた雑誌の書評でぼろくそに最新作をけなされた大江某は、ヤスケン氏の勤務先である出版社の社長に対して「お前のところからは本を出さない」と脅しをかける。村松氏は言う。「批評が気に入らないのなら、言論で対するのが言論人として当然である。自分の地位を利用して、弱いサラリーマンの職を奪おうというやり方は、私にはフェアなものとは思えない」
この程度の人物だから、取材ゼロで、なんら事実に基づかないで他人様を断罪するくらいなら朝飯前であろう。

私は、大江某の言う平和だの反省だのは、一切信用せん。なんてタチのわるい冗談だろうと思っている。

評価は☆☆。
文字通り「神話」がなぜ出来てしまったのか、ぐいぐいと真相にせまる取材力と、平易で明快な文章は素晴らしい。そして「キリスト者として、他人を断罪できる人がいようとは思わない。まして、事実を確かめもしないで、そうできるとは思わない」と書き抜いた著者の姿勢に心から共感する。
これこそ、まっとうな言論人のありようではないか。

最後に、島民の生活のため、あえて汚名を着た赤松氏のご冥福を心よりお祈りします。