Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

殺人者の放物線

「殺人者の放物線」アンドレア・H・ジャップ。

ヒロインのグロリアは、大学以前の経歴が一切抹消されている天才数学者。姪の知的障害児クレアを溺愛しながら、政府機関からの依頼でその都度、仕事を行う。
彼女への依頼はFBI。連続殺人事件がおきて、女性ばかり次々と惨殺される。その犯人の一種のプロファイルを依頼されるわけだ。この事件を捜査しているキャグニー捜査官は、グロリアに対して違和感を覚える。あまりに知的に突出してすぎていて、彼女は「人の心」が全く分からないのだ。
危惧を表明するキャグニーに対して、グロリアは説明する。「心理捜査官がプロファイリングしたところで、犯人がつかまることはない。だから、役に立たない。大事なのは、犯人の心理ではなくて、事実です。事実のつながりの法則性を見出すこと。そうすれば、犯人をつかまえることができる」
彼女は、独自の思考によって、犯人らしき人物を特定するが、なんとその人物は刑務所で服役中の人物だった。刑務所に入っているのだから、犯罪を犯すことはできない。なぜ、こんな間違いが起きてしまったのか?
そのとき、たまたまキャサリンという女性が、犯人に襲撃されたのだがうまく逃げ切ることに成功し、グロリアは彼女と面談して、真犯人にたどり着く。しかし、キャサリンの心を傷つけてしまい、キャサリンは失踪してしまう。キャサリンを追って、彼女は、真犯人のもとへ。
一方、独自の捜査をしつつ真犯人に迫っていたキャグニー刑事は、グロリアからの情報で確信を得て、やはり真犯人のもとへ急行する。
キャサリンを真犯人から救うことはできるのか。。。

といった感じで、結構練られたストーリーである。最後まで飽きずに一気に読める。

著者は、フランスの女流科学者。論理思考で鍛えられたロジックと、人間の情緒との間で揺れ動くヒロインの有様を描く。ヒロインが姪を溺愛する理由がラストで明かされるのだが、これは明らかなシリーズ化への布石だな。ふむ。

評価は☆。
最近のミステリは、おおかたのことをやり尽くした観があって、この手の「推理機械対犯人」みたいな物語だと、国内作家では山田正紀「謀殺のチェスゲーム」という名作がある。最近だと、森博嗣のシリーズが理系ミステリなどと言っているけど、そんな雰囲気があるからなぁ。日本だと好まれるテーマかもしれん。その海外女性版という感じかなと思うが、やはり全体の描写が柔らかい。イマ風で、なかなかいいんじゃないの、と思う。
けど、作者の名前がねぇ。。。いや、どうでもいいんだけどさ「ジャップ」って、気になるじゃないのさ(笑)
まあ、名前は本人にはどうしようもないことであって、本人にはどうしようもないことには責任がないのであって、つまり権限がないことには責任がないという話なんだけど、本人には責任がないことを責めるのは生まれる前の戦争を反省しろとのたまうサヨクと同じ類の馬鹿げた話であることは明白だから、言っちゃならんよねぇ(苦笑)

というわけで、☆1つ進呈します。2つにはならないかなぁ。ちょっとパターン的には食傷ぎみのところがあるので。海外だと、また評価は違うのだろうと思う。