Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

シャルビューク婦人の肖像

「シャルビューク婦人の肖像」ジェエリー・フォード。

舞台は19世紀末のニューヨーク。主人公のピアンボは、肖像画家としてまずまずの名声を得て、恵まれた暮らしをしている。
それは、彼が、肖像画を「本物よりも、ちょっと良く」描くからだ。
しかし、彼は、内心では芸術的な価値がないと思う絵を描くことに葛藤があった。
そのとき、彼に奇妙な依頼がくる。依頼主はシャルビューク婦人。彼女は、他の依頼者の依頼を断っても、その3倍にあたる金額を支払う上に、絵の出来がよければさらにボーナスをはずむという。
この依頼を受ければ、くだらない肖像画を描くことをやめて、自分の描きたい絵がかける、と思った主人公は依頼を承諾する。
その依頼は、さらに奇妙な条件がついていた。なんと、シャルビューク婦人を見て描いてはいけない、というのだ。
婦人と屏風越しに会話をし、婦人がいかなる人物であるか、すべて想像して描かなければならない。そして、出来上がった絵が、もしも婦人本人に似ていれば、莫大な報酬が得られるのである。
ピアンボは、こうして、婦人の生い立ちの物語を、屏風越しに聞くことになるのだった。
一方、ニューヨーク市内で、アフリカあたりから持ち込まれたと思われる、目から出血する奇病が発生する。当局は秘密にしているが、この病気は伝染するからである。
そして、ピアンボの周囲でも被害者が発生する。
ピアンボ自身は、シャルビューク婦人の夫と名乗る人物につけねらわれる羽目に陥るが、どうもその夫が奇病と関係しているらしい。
そして、物語は、思わぬ終幕を迎える。
ピアンボの肖像画の出来は、果たして。。。

分野としては、ミステリというか、ゴシックロマンというか、幻想小説というか。ホラー的な要素もある。
なにしろ、舞台がいい。大恐慌前の、好景気に沸くニューヨーク。
そして、物質的な欲望のために、芸術を諦めていた主人公が、この仕事を通して、本来の自分の芸術活動を思い出していく過程もリアルである。

評価は☆☆。
どっぷりと雰囲気にひたりながら、長い夜に読むのに最適の小説だ。あれよ、あれよという間に、ラストに「ああ!」という結末が訪れる。
損はない、と思う。

海外翻訳小説が苦手、という人手も、抵抗なく読めると思う。翻訳が良いのだろう。

このジェフリー・フォードという著者を私は不明にも知らなかったが、なかなか面白い作品を書いているようだ。
機会があれば、他の著作も読んでみたいと思う。

婦人の語る「荒唐無稽な、ウソと真の入り交じった物語」がひどく魅力的だ。思わず「ふむふむ」と思わされてしまう。
都市伝説と同じで「まさかあ!?でも、あるかもしれないな。。。」というような。(そういえば、昔マク○ナ○ドは猫の肉、なんて言ってました。そんな大量に猫を捕まえるほうが大変だって(笑))

夏の夜向けなのかもしれませんなあ。