Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

自由という服従

「自由という服従数土直紀

「「自由だからこそ、人は権力にとらわれていく」という帯のキャッチに惹かれて購入。
しかし、なんと本書の結論は「KYはその人の自由だ」というものであった。それだけかよ、と思ったが、やっぱりそれだけである。

まず、著者はかつてのワールドカップ日本チーム、トルシエ監督と中田英寿中村俊輔選手の例を挙げる。監督という権威にそれぞれの選手が、いかに反抗し服従したかを、ゲーム理論(早い話が期待値)から説明する。
つづいて、会社内におけるOLさんの「気に入らない男性社員」に対する「いじわる」という名前の反抗から、これらの行為は彼女たちが期待されていない故に「自由」であり、しかしそれが男性社会を肯定することにつながっていると説く。
男女関係の考察は、そのまま恋愛関係にも及び、恋愛においてなぜ男性側が積極政策、女性側が消極政策をとるかを説明する。

そして、最終章に至り、これらの活動が「対他者」を考えたときの利害得失から自由な選択の範囲でなされたものであり、しかしその「他者」は自分の頭の中の存在にしか過ぎないと指摘する。

これが、本1冊を費やしてなされるべき指摘であろうか?私にはわからない。

しかし、あまりもてない独身男として、恋愛関係における男女戦略の考察においては指摘しておきたい。
この著者の分析は、私にはトートロジーにみえる。
つまり「男性側が積極戦略、女性側が消極戦略」をとる理由を「そのほうが有利だから」だと説明するのだが、それは「男性側が積極戦略をとる場合、女性側は消極戦略をとるほうが有利」だからであり、なぜ男性側が積極戦略をとるのかといえば「女性側が消極戦略をとるからだ」となる。
ニワトリが生まれたのはタマゴがあったからです、ではなぜタマゴがあったかといえば、ニワトリがいたからです。ああ、馬鹿馬鹿しい、と思ってしまった私であった。。。
それを「現状の体制を支持する行為」だと指弾したところで、そりゃニワトリがいてタマゴもあります、以上の話ではないだろう。
ついでに言えば、一昔前と違って、最近の女性は「積極戦略」寄りの人も増えている。じゃあ、なんでそうなったか?といえば、そのほうが有利になるケースが増えたから、となる。それはつまり、男性側に消極戦略をとるものが増えたら、となる。これでは堂々巡りである。
これでは、社会の変化をなんにも説明していないわけだ。

評価は無し。まあ、こういう相性の悪い本もある。