Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

易断に見る明治諸事件

「易断に見る明治諸事件」片岡紀明。

さきに「運命が見える女たち」を読み、最近の占い師の状況について思うところがあった。
そこで、じゃあちょいと昔はどうだろう?というので、仕舞い込んでいた本書を再読。

本書は、有名な「高島嘉右衛門」の易断についてまとめたものである。
高島嘉右衛門は、若いときに金の外国人販売(教科書で有名な、金と銀の交換比率が違うことを利用して、外国人に金を売り銀を手に入れると儲かる手法で違法だった)をして伝馬町の牢獄へ投獄された。
獄内で明治維新を迎え、茣蓙の下から囚人の残した易経を発見。
獄内でそのすべてを暗記し、易断の術を会得したと言われる。
出所後に、横浜を起点として、次々と新事業を立ち上げた。
日本初の蒸気機関車を横浜から新橋へ走らせたり、同じく日本初のガス灯をつけたりしている。
財界人として大成功を収めて著名であるが、実は易断の名手として名高い。
事業を引退した後は、その「入神の域に達する」と言われる易断で、政治家や財界人の相談相手となった。
今、巷間で有名な「高島易断」を名乗るところが何か所もあるが、いずれも高島嘉右衛門とは無関係である。
それだけ、高島嘉右衛門の易断が有名だったのである。

高島嘉右衛門の易断は、個人の紛失物探しや縁談の占いから始まり、ついには日清戦争日露戦争、三国干渉まで次々と行って、驚異の的中率を示している。
本人に言わせれば、それは神がいるので当然だということになる。(易神というが、嘉右衛門はこの言葉を使っていないようである)
日清戦争における黄海海戦の予言、日露戦争についてはきめ細かく日本海海戦の予言(日本艦隊は動くべからず、さすれば勝ちと占って、実際に対馬海峡バルチック艦隊が現れて大勝利)三国干渉については譲歩して吉(三国の名をあげたが、これは惜しくハズレた、米国の介入を予言)などである。

読み物として純粋に面白い。
著者は、高木彬光のお弟子さんであるそうで、そういわれればニヤリとする人もあろうと思う。

本書を読んで、現代の占い師と高島嘉右衛門の占いに、大きな違いがあることに気付いた。
現代の占い師は、断定する。「こんどの彼とは、うまくいくでしょうか?」「うーん。残念だけど、今度もダメね」てな具合に。
高島嘉右衛門は、こうすれば良くなるが、、、という占いが非常に多い。
「今度の彼とはうまくいくでしょうか?」「この男は、気が移りやすい性質で、なかなか落ち着くことはできない。あと3年以内に、落ち着くことはできないだろう。あなたが、3年以内に結婚をお望みなら、それは無理である。どんなことをしても3年離れない、というのであれば、うまくいくだろうが」
という答え方をする。
もちろん、結果はダメだけれども、言い方が違うのである。

現代は、科学の時代である。
嘉右衛門の時代は明治であり、いまだ江戸の気風が残っていた。
近代人が易など信じて、と笑われたこともあったようだが、嘉右衛門自身が易で大成功を収めたのであるから、文句のつけようがない。
現代人は、正しい占い師であれば、正しい予言すなわち「あたり」を言えるはずである、と考えている。
だから、デジタリイに「当たった、はずれた」と言える予言を尊び、どちらともとれる発言をすると「偽物だ、誤魔化そうとしている」と考える。
明治人は「そんなに予言が上手ならば、占い師自身が事業をして大成功をできるはずじゃないか」と思う。
そのままやったのが、高島嘉右衛門ではないか、と思うのである。

私は、偉大な占いの能力が自分にあったら、やっぱり事業に役立てたい。

さて、高島嘉右衛門は、己の人生の事業を占って「天火同人」の卦を得たという。大いに周囲に協力者を得て、成功する象である。
本書の著者も、本書を上梓するにあたり、卦を立てたところ、やはり天火同人の卦を得たという。

そこで、私も擲銭法を用いて、本記事のアップについて占ってみた。
結果は「水火既済」であった。
どうやら、この記事も、これで打ち止めが吉のようである。