Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

アインシュタイン・セオリー

アインシュタインセオリー」マーク・アルバート

小説の冒頭は、クラインマンという老科学者がテロリストに拷問を受けているところから始まる。
ある秘密の場所を言え、というのである。
実は、クラインマンはアインシュタインの晩年の弟子のひとりであったので、狙われたのだ。
テロリストが追っていたのは「アインシュタイン・セオリー」いわゆる統一場理論である。

アインシュタインは、有名なE=MC二乗という相対性理論を発表し、実は質量とエネルギーが同じものであることを示した。
その次に出てきた問題は、量子力学の登場であった。
量子力学というミクロな世界の理論と、宇宙スケールの相対性理論は矛盾点がたくさんある。
宇宙の始まりは、極小の点だと思われるのだが、その小さな世界から宇宙が誕生すると、物理法則がいきなり違って、しかもミクロとマクロの世界で物理法則が異なることになる。
これじゃあ宇宙誕生のストーリーなんて作れないので、色々な方法が考えられた。
その中でもっとも根本的な解決は、四つの基本的な力(重力、電磁気力、強い力、弱い力)を統一した物理学の理論を打ち立てることで、そうすればミクロの世界から宇宙スケールまでを統一した理論で説明できるようになるのである。
アインシュタインは、相対性理論を完成後に、この統一場理論に挑戦し、死ぬまで研究を続けたが、未完成のまま終わった。
そして、今でも物理学者たちの「最終理論」として問題になっているテーマなのである。

クラインマンはテロリストの拷問のために死亡するが、その死の直前、自分の弟子の科学史学者デイヴィッドを呼ぶ。
そして、彼にとんでもない遺言をする。
実は、アインシュタインは統一場理論を完成していた。しかし、相対性理論が原爆を産んだのと同様に、統一場理論ではさらに強力な兵器ができてしまう。
それを恐れたアインシュタインは、あえて理論を発表しないで、弟子にその理論を隠しておくように命じた。
その場所について、不思議な数字を言い残す。

デイヴィッドは意外な告白に驚くが、彼がクラインマン教授とコンタクトしたことを知って、テロリストとFBIが彼を追ってくる。
テロリストは強力な兵器の開発の為、FBIはもちろん米国がその理論を独占することが目的である。
デイヴィッドは、両者の手から逃れながら、学生時代のガールフレンド(今では将来を嘱望される超ひも理論の物理学者)の助けを借りつつ、隠された統一場理論を追う。
テロリストにもFBIにも、理論を渡さないようにするつもりである。
その隠し場所は、実に意外なところにあった。
そして物語は最終、物理学研究の粒子加速装置の施設内で、最後の戦いが行われる。。。


冒頭から、どんどん人が死ぬ物語である。
テロリストのあんちゃんときたら、エレベータのスイッチを押すのと同じくらい気軽に銃の引き金をひくのだ。
まったく数えきれないくらいである。
まあ、アメリカの小説だし、そんなもんかな(苦笑)。

アイディアの着想そのものは、面白い。
アインシュタインが統一場理論を実は完成していた、というのは、それだけでわくわくする設定である。
その理論がふたたび軍事転用される、というシチュエーションも、だから隠したという説明も、結構納得感がある。
なので、はちゃめちゃな小説だが、それなりに世界観が統一されているのだ。

そういうわけで、評価は☆。
まあまあ、いいんじゃないでしょうか。

先日も、北朝鮮が核実験を行った。
その上、面倒なことにSLBM(潜水艦から発射する弾道ミサイル)の実験も行っている。
なぜ北朝鮮がこんなことをするのか、本当に米国の脅威を感じているのかは一切謎である。

核実験を行うと、言うまでもないが、核拡散防止条約違反となり、ひどい経済制裁を食らう。
すると、ますます北朝鮮は経済的に困窮する。
そこで、金をよこせ、援助をよこせという話になり、誰も相手にしないので(相手にするメリットなんてない)こっち見ろや、という話でまた核実験をやる。
すると、さらに制裁が強まる。ばかばかしい限りである。
それでも、おそらく国内的には価値があるのだろう。
偉大な将軍様が悪の帝国、米国を相手に果敢に戦っている。経済制裁が強まっていることこそ、悪の帝国アメリカと闘っている証拠だ。
全国民が一丸となり、この米帝を打倒しよう!てなもんだ。
なんのことはない、国内の不平不満を押さえつけるために外敵が必要なのである。
北朝鮮SLBMなど、特に脅威でもなんでもない。秘密は地形にある。
朝鮮半島の海は浅い。出港した時点で、もう丸見えなのである。

今や核兵器は持っていても使えない兵器と言われるまでになったが、それでも北朝鮮レベルだと、マトモではないので、いささか面倒な事態ではある。
失うものがない連中に、何を説いても無駄なのである。
救いは、偉大な主席様が多数の喜び組を抱えて、酒池肉林、毎日楽しく過ごしていることである。
その暮らしを手放すのは嫌だろうから、報復攻撃確定の核ミサイルボタンを押すことはしばらくないだろう。
怖いのは、彼の生活そのものが成り立たなくなるレベルまで困窮することである。そうなると、捨て鉢になる可能性があるからだ。
よって、経済制裁をしながら、実は将軍様一族だけは贅沢三昧できる程度の裏道をつくっておかないとまずいのである。

まあ、しかし、まさかアインシュタインも、自分の発見した理論が東洋の半島国家の領主の生活を支えるとは、思わなかったことだろうなあ。
世の中は、どこでどうなるか、まったくわからないものである。