Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

バイアウト

「バイアウト」幸田真音

ヒロインは広田美潮というちょうど30歳を過ぎたばかりの外資系証券会社のセールス。
大手の投資ファンドに食い込みをはかっている。
その投資ファンドが目を付けたのが、都内の有名スポットに多数の不動産を抱えている音楽会社のヴァーグ社。
で、そこのナンバーツーが、なんと美潮の父親だという設定である。
美潮の父母は離婚しており、その原因は不明である。
女手ひとつで育てられた美潮であるが、母親は少々問題のある人物だった。
それでも、自分を捨てた父親は許せない。
そこで、美潮は、20年が経過して父親が懐かしくなった娘を演じて、ヴァーグ社の内情をさぐる。
立派なインサイダー行為である。
くだんのヴァーグ社は、投資ファンドのほかにもディスカウントチェーンや海外の別の投資ファンドなど、同時に3社からTOBをかけられる展開になった。
苦境に陥ったヴァーグ社は、TOBに対抗して「焦土作戦」を敢行する。
鍵を握る株を持つことになった美潮の判断は。。。

というような小説。
テレビの2時間ドラマ向けのストーリーであった(笑)。
幸田真音にしても、まあ、この程度の出来映えということもあるのである。
評価はナシで。

最近は、投資ファンドに対する情報公開義務も厳しくなったので、すっかり敵対的買収も見られなくなった。
ただ、もっとほかに原因があり、それは根本的に、この国の事業体に成長性が見られなくなったためだろう、と思っている。
投資ファンドは、他人様からカネを預かって株を(あるいは不動産や債権を)買う。
買って保有しているだけでは利益が出ないから、必ずこれを売り抜ける。
売って初めて利益確定だから、どこで誰に売るかが重要なのである。exitなどという言い方もする。
あの業界(笑)の人たちは、会社を「ハコ」、売却を「出口」という。
私もずいぶん、お付き合いがありました(苦笑)。

さて、会社を買う側の論理で謂えば、買っても、それ以上の利益が出ると見込むので、高いカネを出して買収を仕掛けるのである。
つまりは、成長性が問われる。
そもそも、今後の成長が期待できない会社の株にTOBなんか仕掛けても、誰も買ってくれないから「出口なし」である。
ホリエモン村上ファンドも跳梁跋扈しないファンドの世界は、たしかに綺麗ではあるが、しかし、である。
「白川の清きに魚のすみかねてもとの濁りの田沼こひしき」
という。
清く正しいばかりでは、世の中が停滞する。
多少の濁りがあるほうが、ダイナミックで、人も生きやすいのである。
最近の芸能人の不倫騒動などを見て思うのだが、どうしてみんな「正義」になりたがるのか?
そんなに、品行方正で立派なことが大事なのか。
正直なところ、私にはさっぱりわからんのである。

どうせ、世の中なんぞ、誰が白で誰が黒かなぞ、そう簡単に決められる話でもないし、決めなくてもいい。
まあ、テキトーに、各々が思うようにやればいいと思うのである。
どうも、最近は、自分と違う意見が許せない人種が多いようで、だんだん人間が狭量になってきているようで困る。
昔から「清濁併せのむ」というが、相反する矛盾を、まあまあ、と飲み込むのが人間の器量と決まっているのだ。
そういう器量がないと、大きな仕事はできないのである。

そういうわけで、矛盾だらけ、言うことめちゃくちゃ、首尾一貫しなくても「それが器量というものよ」と澄まして世の中を渡っていけば良い。
そういう人間に、私はもうなってます(苦笑)。