Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

意見不表明

東芝の四半期決算ですが、ついに監査法人の「意見不表明」での発表となりました。
異常な事態です。

で、私はかれこれ10年近く前のことを思い出しました。
決算発表を控えた我が社でしたが、監査法人から「このままでは意見不表明」と言われていたんですね。
いわゆるゴーイング・コンサーン(事業の継続性に関する疑義)は、すでに付いていました。
赤字だったので。
しかし、それならそれで、赤字の決算発表をすればいいわけです。

監査法人が意見不表明を言ってくるのは、平たく言えば「赤恥をかかされる」からです。

東芝の場合は、以前にも大きな粉飾があって、そこでウミを出し切ったはず、だった。
なのに、再び原発事業でドデカイ償却をしなければいけなくなった。
監査法人は、経営陣に対して「あんたら、知ってたんでしょ?ウチらを騙したんでしょ!」となります。
株主からは「ゴルァ!くされ監査法人のどアホが!どこに目ぇつけとったんや!!」
と怒られます。
赤恥ですね。
ですから、今度こそ、となって、なかなか容易には適正意見(決算が正しいと認める)を出さないわけです。

我が社の場合は、投資した新規事業が上手くいっておらず、問題になっていました。
その株式評価を減損するべきだ、というわけです。
すると、なんと、債務超過に落ちるわけでした。。。
上場維持のためには、1年以内に債務超過状態を解消する必要があります。
その当時の我が社の状況からして、債務超過に陥った場合、1年以内に回復する見込みはゼロでした。
代表は、監査法人に対して、特損処理を1期待ってほしいと言いましたが「それは去年もいったでしょ」状態。
こうして、我が社は追い込まれたわけです。
適正意見をもらって、かつ、債務超過を回避する手段は、増資しかありませんでした。
こんな業績ですし、公募はとても間に合わないし、株価もつきません。
三者割当しかない。
つまり、経営陣の比率を下げてでも、外部の資本を入れるしかなくなったのです。

会社を生き残らせるため、我々経営陣は外部株主の募集に奔走しました。
自分たちを首にする株主を短期間に探すしか、会社を生き残らせる方法がないわけです。
こうして、私は上場会社経営陣から去ることになりました。


東芝の有様を見ながら、そんな日々を思い出しました。

東芝は技術の会社ですが、技術と経営は違います。
東芝の経営陣は、その違いを理解できませんでした。
東芝の死命を決したのは原発事業ですが、原発が技術的に安全であれば良いのだろう、と東芝の経営陣は考えていたのでしょう。
しかし、原発事業は、現在の市場では価値がありません。
東芝のメモリ事業を売ることは出来ますが、原発事業は売れません。買う人がいませんから。
ですので、黒字を出して会社に貢献したメモリ事業を売って、赤字の元凶の原発事業を残す形しかとれないのです。
すべて経営の判断ミスです。


最後に言いますが、そもそも何のために監査法人の意見が必要か?といえば、これは投資家保護のためです。
投資する人にとっては、有価証券報告書が嘘でないことは、最低限の条件です。
その最低限の条件を守れないということは、投資家の保護ができないことを意味します。
「自己責任の原則」は、その情報が正しいという前提があって、はじめてその判断の責任を本人が負うことになります。
東証が、投資家保護の原則を守るのであれば、東芝上場廃止しかないでしょう。
四半期決算だから適正意見はいらない、なんて話はきいたことがありません。

さて、東証は、巨大企業東芝の前でも「投資家保護の原則」を貫けるでしょうか。
興味深く、見守っていきたいと思います。