Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

にらめっこ

東電が金融機関50社に支援要請を行ったそうであります。
震災前の融資残高の維持と、金利の引き下げです。1%未満の低金利を要請しているそうです。

東電自体「継続企業の前提に疑義」が注記されており、つまり、資金繰りが厳しくて倒産の危険があるのです。事故の収束が見えないのですから、事故の処理費用もいったい最終でいくらかかるのか、わからない。賠償金もいったいいくらになるのか、わからない。あっさりと債務超過=実質倒産になる危険があるわけで、スリル満点なデンジャラス銘柄ですなあ。

で、とにかく資金繰りが回らないので、返済もできません。
融資残高の維持といいますが、これは「リスケ」ですね。返済できないので、延滞です。
そこを、いったん返済したことにして、あらたに同額を借り入れる、するとリスケになりません。あくまで「返済」と「新規借り入れ」です。
その「新規借り入れ」の金利を、超低金利にしますと、いわゆる「金利減免」ではなくなります。
金利減免措置とは、返済困難な企業に対して行われるものですが、形式上では返済したことにしますから。

こんなオペレーションには、名前がついておりません。
だって、普通は、こんな要請は通らないからです(笑)。実際に行われない手段に、名前がある道理がないのです。
あえていえば「東電スキーム」となるのでしょうがね。

しかし、この要請は、受けるほうにすれば、たいへん悩ましいものです。

万が一、東電のこの要請を受けて、その後、東電が会社更生にでもなった暁には、間違いなく被害を直撃弾で食らいます。収益が傷つくだけではなくて、株主総会が乗り切れないかもしれません。
だって
「もうすぐ潰れそうな相手に、よりによって金利を下げて貸し出した馬鹿経営者」
と批判された場合に反論は難しいですし、ヘタをすると株主代表訴訟のターゲットという事態だってあり得ます。「危険な相手には、より慎重に審査をして、それ相応の金利をとるのが経営者の義務であるのに、その義務を怠った」と訴えられたら、かなり裁判は厳しいと予想されます。

とすると、返済は良いけど、貸し出しはダメだと返事することになります。
中小企業相手の「貸しはがし」と同じ手段をとるならば、「また貸しますから、いったん返済してください」と言って返済させ、入金を確認したら電話して「社長さん、あかんわ。今、上にかけあったけど、審査で急にダメと言われましたんや」と言えばいいわけですな(笑)
なあに、総理大臣だってかます手なんですから、一般企業がこの程度のことをやっていかんことはありませんよ。

で、困った東電は、次の金融機関に「頼むから追加融資してよ」と言うことになります。言われた金融機関は「なんで、うちだけが」と言います。
「あそこは断ったらしい」「そしたら、もうアカンのちゃうか」「もうリキないやろ」「ウチも早く回収せんと」
などとなりますと、タイタニック号のネズミよろしく、みんな我先に逃げ出します(苦笑)

ところが、こういう大きな相手ですと、うまくいけば政府の力で延命するかもしれず、そうなれば、後がやっかいです。
で、金融機関50社は、お互いににらみ合います。
「お前、まさか逃げるんじゃないだろうな」
最初に逃げる奴がいると、皆が雪崩をうって逃げ出します。
しかし、最初の一人は恨みを買うので、なるべくなりたくない。沈むときは皆一緒。かくして、互いににらみ合いとなるわけです。

東電を囲んで、金貸し達がにらめっこ。
なんだかおかしな光景ですが、これは目を離せません。

せめて事故が収束すれば、次の見通しも語れるのでしょうが。。。まだ、汚染水の処理という初歩ですからね。。。さて、いつになったら「一定のメド」がつくんでしょうか?

6月22日追記)
金融機関は、残高の維持では合意を行ったようです。事業の公共性に鑑みて、といってますが、誰も逃げられなかったらしいですね。
一方で、追加融資には応じられない、と。今の格付から考えると、相当の高利でなければ融資できませんし、上記した金融機関の経営責任が問題になるからです。
東電は、原発停止による燃料費の高騰と賠償費用の一部前払いによって資金繰りが急迫していますが、金融機関が追加融資に応じず、格付の低下によって社債も発行できませんので、早晩つまることになります。今のところ事業の独占から、将来キャッシュは見込めるわけですので、会社更生が現行法における解ということになりますが、、、さて、どうなるでしょうか?被災者に対する損害賠償は一般債権と思われますので、そのままではマズイということになります。日銀特融や一時国有化も選択肢ですが、今の政権は総理の続投騒ぎで、仕事をしていません。
東電が独占企業でなければ、第三者割当などで他社傘下入りをして生き延びる、経営陣は総退陣というパターンも解決策ですが、それもムリですし、なかなか選択肢がないように思います。