Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

統計データが語る日本人の大きな誤解

「統計データが語る日本人の大きな誤解」本川裕。

 

本書の著者は統計の専門家で、日本人の通説に対して統計データで疑義を提議する。

まず、日本がバブル後に技術立国の地位から転落した、という通説に対しては、国際収支の技術収支データから反論する。
技術収支によれば、むしろバブル後に国際技術収入は増えている。むしろ、技術立国度は増しているではないか、という主張である。
また、小泉改革が格差を拡大した、という主張に対しては、いわゆるジニ係数は高齢化の影響を受ける(高齢者が増えて年金収入だけの人が増えれば、当然に格差が増える)ので、比較数値としては適当ではないと指摘する。
そこで、厚労省の家計調査を基準にする。これは、戦後ずっと行われてきた調査であり、継続性があって比較しやすい。
この数値を見ると、むしろ小泉以前および小泉以後のほうが格差が開いており、小泉改革は格差の縮小に働いたことがわかる。
原因としては、特権的地位にいた中高年層が没落したためであろう、とする。

日本人の働きすぎについては、たしかに労働時間の比較で見ると、日本人の労働時間は長い。
ところが、その労働についてストレスを感じる人の割合が少ない。
面白いことに、日本人は長時間労働をあまり苦にしていないようだ、という。


データをもとにした指摘であるから、良いも悪いもないのである。
世間で言われている通説は、印象論やら政治的意図でもって歪められているのであろう。
評価は☆。
なかなか、面白い。

 

ただし、疑問もある。
技術立国についての技術収支だが、これは製造業にかかる収支しか見ていない。
バブル以前については、それで十分であろう。
しかし、バブル後は「脱工業化社会」であり、製造業に変わってソフトウェアなどのIT系が産業の主流になった。
残念ながら、日本のIT産業が世界をリードしている、などという話は聞いたことがない。インド以下である。
インドなら、まだGAFAの下請けをやれるが、日本にはその実力もないのである。
そういう構造そのものの転換については、継続性のある統計のみでなく、別の視点が必要なのかとは思った。

 

小泉改革が格差を拡大させた、といって親のカタキのように敵視する言説はよく見かける。
しかし、私は今でも肯定的である。
小泉以前の日本がそんなに良かったとは、まったく思えないのである。
だいたい、小泉改革はすでに20年近い昔の話ではないか。
仮に、小泉改革で不適当な点があれば、そりゃ直せばよかろう。
労働者派遣法をひとつ改正するだけの話ではないのか。
それを20年間放置してきた、その後の政権のほうがよほど問題ではないか、と思う。
小泉の時代は、小渕のときにバブルが崩壊し、密談であとを継いだ森がサメ頭の無能で経済はどん底、大学生の内定率が4割であった。
いわゆる氷河期である。
その氷河期を、兎にも角にも終わらせなければならなかったのが小泉時代だ。
結果、大幅に雇用関係の規制を緩和したが、それでとにかく、無職の人を減らしたのである。これは事実である。
無職の人を減らしたら、次は安定をさせなければならないだろうが、それは小泉以後に託された。
その課題を、誰もやらなかっただけの話だ。

コロナで政権が迷走している。その有様を毎日、私達は見させられている。
しかし、それは非常時で、たまたま目立っているだけの話なのだ。
はっきり言えば、小泉以後、すべてこんなふうだったよ。だから、今こうなんだ。