Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

許されざる者

許されざる者」レイフ・GW・ペーション。

 

舞台はスウェーデンである。本書は北欧ミステリなのだ。

主人公のヨハンソンは、スウェーデンの国家犯罪捜査局の元長官で、彼の後輩たちからは今でも「長官」と呼ばれている。現役時代は「角を見通す男」と呼ばれ、難事件を解決するので有名だった。

そのヨハンソンは、旧知のハンバーガー屋でハンバーガーを買い、後輩たちと談笑した直後に突如、倒れてしまう。彼は太りすぎであり、脳に血栓が生じたのだ。ただちに後輩たちがパトカーでヨハンソンを病院に運び、彼は一命をとりとめた。しかし、右半身麻痺が残ってしまう。さらに、心臓にも問題が生じていることがわかり、リハビリをしながら治療の日々が始まる。

その彼の主治医が美人の女医なのだが、その女医がヨハンソンに相談を持ち掛ける。彼女の父は聖職者なのだが、実は信者の告解において、当時9歳の女の子が暴行された上に殺され未解決のまま25年の時効を迎えた事件があるのだが、その事件の犯人を打ち明けられた、というのである。しかし、聖職者である父は、その秘密を漏らすことはできなかった。そして、臨終の場で、娘にその秘密を打ち明けたのだ。しかし、父は、肝心の犯人の名を告げなかったという。

実は、スウェーデンでは殺人事件の時効は無期限に法律が改正されたのだが、その法改正の半年前にこの事件は時効が完成してしまっており、もはや真犯人を突き止めたところで、犯人を裁くことはできない。

この女医の話に興味を持ったヨハンソンは、車いす生活の暇つぶし半分で、この事件を捜査し始める。自分の元部下、介護士の女性、兄、義理の弟などが捜査チームである。そして、彼らの活躍により、ヨハンソンはその当時、見過ごされていた真犯人にたどり着くことができた。

ただ、彼を裁く法はない。ヨハンソンは、この男に対して、いかなる行動に出るのか。。。

 

実は、最初に捜査資料を取り寄せた時点で、ヨハンソンには事件の輪郭がすでに見えている。あとは、具体的にそれに該当する人物を特定するだけであり、単なる人探しの作業になっている。

そういう意味では、捜査の道筋は最初から一本道なのであり、そこだけを追えばとてもシンプルだ。この小説の見どころは、やはり時効事件の犯人に対して、どう対処するかなのである。極論をいえば、法を無視して私刑にするとか、である。ヨハンソンも、その選択肢を「4つの選択肢」のなかに入れている。読者も大いに悩むところであると思う。

なかなか面白い。評価は☆☆。

 

ところで、本作中の主人公ヨハンソンは死刑廃止論者である。それは作中でも明言されており、実際にスウェーデンでは死刑は廃止されている。

私自身はかつて死刑存置論者であったが、年齢を重ねて考えも変わり、今では死刑廃止論にむしろ賛成するようになった。いずれ困難な問題であることに変わりはないが。

で、死刑廃止する代わりに、仇討ちを復活させたらよいのではないかと思うことがあるのである。そんなに敵を討ちたいのであれば、自ら討つべし。なんだか、かつての幕府の方針は、それなりに筋が通っているような、、、そんなこと、ないかなあ(苦笑)