「セカンド・チャンス」ローズマリー・オーバート。
主人公のエリスは、トロントの峡谷に住むホームレスである。前職はなんと判事。
彼は、友人の妻に暴行を働き、そのために判事の職を失ったのである。
その彼が、近所で黒人の手首を見つけたところから物語は始まる。その手首は、指輪をつけたままだった。
その指輪こそ、彼がロースクール時代に、友人5人と「今後、なにかあった時に、生涯で互いに1度づつ無条件に助け合う」ことを誓った指輪だったのだ。
なぜ、ここに指輪があるのか?エリスは調査を始めることにした。
ホームレス仲間の女性に目撃情報を聞きに行くと、代わりに、ある若い売春婦と話してくるように依頼される。
その女性は、ボランティアで提供されている更正施設「セカンドチャンス」に入所していたのだが、妊娠していた子供を取られて出てきたのだという。
それは事実なのか?なぜ、妊娠した若い女性を集めているのか?臓器売買か?
しかも、その更正施設を運営している委員は、なんとロースクール時代に指輪を交換した仲間で、今は弁護士の2人だった。
彼ら二人のうち1人は女性で、彼らは大学時代の付き合いから結婚している。夫はやり手として有名で、もうすぐ最高裁判事になるという話である。
最高裁判事に推薦されるような男が、なぜ、危険な臓器売買に絡む闇ビジネスをする必要があるのか?
調査を進めるうちに、手首を発見したのは、ロースクール時代のもう一人の友人だったことがわかる。
手首を切断されたのは、彼の同性愛の恋人である警官で、セカンドチャンスを内偵中だったという。
いよいよセカンドチャンスの謎を解くために、エリスは施設に侵入しようと試みる。
しかし、果たせず、峡谷に戻るところを洪水に遭う。
病院で体力を回復したエリスは、ついに、元弁護士の友人と直接対決に赴く。。。
ローズマリー・オーバートはこのシリーズ第1作が大当たりし、作家の地位を不動のものにした。
なにしろ、元判事のホームレスというキャラクターがいい。
そして、彼の輝かしい過去と、現在おかれている境遇のギャップが、傷ついた男の再生というハードボイルドのスタイルにきちんと合っている。
全編に流れる哀愁と、トロントの自然と都会の対比が鮮やかである。
読み始めたら「ふんふん」と読み進み、最後に「なるほど」と。
主人公エリスは、最後に再生するし、不可解なセカンドチャンスの動機も解明される。みんな心に傷を負っていたということだ。
評価は☆。ちゃんとしてます(笑)
処女作ということで、多少のぎくしゃくが感じられないこともないけど、ストーリーは滑らかで、伏線もきちんと生かしてある。
良質の小説である。ヒットしたわけだなあ。
かつて、安倍内閣時代に「再チャレンジ」が訴えられたことがあった。
言うまでもないが、資本主義は常に新しい市場の開拓を必要とする。一度失敗したら再起不能にしてしまっては、リスクが高すぎて、社会の活力を削ぐという指摘であった。
まったくもっともな話で、私は大いに評価していたのだけれども、どちらかというと郵政反対議員の復党活動のいいわけにされてしまったようなところがあって、盛り上がりにかける結果となったのは残念なことである。
人生は、波があって当たり前である。大いにうまく行っていることもあれば、まったくダメなときもある。
気をつけないといけないのは「こんなものかな?もうちょっと。。。」と思っている時が、実は後から思い返せば「うまくいっている時」だということである。
自他共に認める絶好調なんて、そうそうあるものではない。「こんなもの」が貴重なのである。
その「こんなもの」ですら、一度失えば、いかに回復が大変なことだろうか。
世の中の成功の半分は、ただの運である。正しい判断をしても、成功できるとは限らない。
正しい判断をしても、実現するとは限らないからである。無数のケースがあり、それぞれを想定し、人は動く。
実現した一つをもって、他の可能性を考慮する必要はなかったといってしまうことはできないのだ。
早い話が、元判事のホームレスは、なかなか身につまされるということである。いまや人生、一寸先は闇ですからなあ。。。
主人公のエリスは、トロントの峡谷に住むホームレスである。前職はなんと判事。
彼は、友人の妻に暴行を働き、そのために判事の職を失ったのである。
その彼が、近所で黒人の手首を見つけたところから物語は始まる。その手首は、指輪をつけたままだった。
その指輪こそ、彼がロースクール時代に、友人5人と「今後、なにかあった時に、生涯で互いに1度づつ無条件に助け合う」ことを誓った指輪だったのだ。
なぜ、ここに指輪があるのか?エリスは調査を始めることにした。
ホームレス仲間の女性に目撃情報を聞きに行くと、代わりに、ある若い売春婦と話してくるように依頼される。
その女性は、ボランティアで提供されている更正施設「セカンドチャンス」に入所していたのだが、妊娠していた子供を取られて出てきたのだという。
それは事実なのか?なぜ、妊娠した若い女性を集めているのか?臓器売買か?
しかも、その更正施設を運営している委員は、なんとロースクール時代に指輪を交換した仲間で、今は弁護士の2人だった。
彼ら二人のうち1人は女性で、彼らは大学時代の付き合いから結婚している。夫はやり手として有名で、もうすぐ最高裁判事になるという話である。
最高裁判事に推薦されるような男が、なぜ、危険な臓器売買に絡む闇ビジネスをする必要があるのか?
調査を進めるうちに、手首を発見したのは、ロースクール時代のもう一人の友人だったことがわかる。
手首を切断されたのは、彼の同性愛の恋人である警官で、セカンドチャンスを内偵中だったという。
いよいよセカンドチャンスの謎を解くために、エリスは施設に侵入しようと試みる。
しかし、果たせず、峡谷に戻るところを洪水に遭う。
病院で体力を回復したエリスは、ついに、元弁護士の友人と直接対決に赴く。。。
ローズマリー・オーバートはこのシリーズ第1作が大当たりし、作家の地位を不動のものにした。
なにしろ、元判事のホームレスというキャラクターがいい。
そして、彼の輝かしい過去と、現在おかれている境遇のギャップが、傷ついた男の再生というハードボイルドのスタイルにきちんと合っている。
全編に流れる哀愁と、トロントの自然と都会の対比が鮮やかである。
読み始めたら「ふんふん」と読み進み、最後に「なるほど」と。
主人公エリスは、最後に再生するし、不可解なセカンドチャンスの動機も解明される。みんな心に傷を負っていたということだ。
評価は☆。ちゃんとしてます(笑)
処女作ということで、多少のぎくしゃくが感じられないこともないけど、ストーリーは滑らかで、伏線もきちんと生かしてある。
良質の小説である。ヒットしたわけだなあ。
かつて、安倍内閣時代に「再チャレンジ」が訴えられたことがあった。
言うまでもないが、資本主義は常に新しい市場の開拓を必要とする。一度失敗したら再起不能にしてしまっては、リスクが高すぎて、社会の活力を削ぐという指摘であった。
まったくもっともな話で、私は大いに評価していたのだけれども、どちらかというと郵政反対議員の復党活動のいいわけにされてしまったようなところがあって、盛り上がりにかける結果となったのは残念なことである。
人生は、波があって当たり前である。大いにうまく行っていることもあれば、まったくダメなときもある。
気をつけないといけないのは「こんなものかな?もうちょっと。。。」と思っている時が、実は後から思い返せば「うまくいっている時」だということである。
自他共に認める絶好調なんて、そうそうあるものではない。「こんなもの」が貴重なのである。
その「こんなもの」ですら、一度失えば、いかに回復が大変なことだろうか。
世の中の成功の半分は、ただの運である。正しい判断をしても、成功できるとは限らない。
正しい判断をしても、実現するとは限らないからである。無数のケースがあり、それぞれを想定し、人は動く。
実現した一つをもって、他の可能性を考慮する必要はなかったといってしまうことはできないのだ。
早い話が、元判事のホームレスは、なかなか身につまされるということである。いまや人生、一寸先は闇ですからなあ。。。