「鬼火」マイクル・コナリー。
ボッシュとバラードのシリーズ。こうなったら、死ぬまで読んでやる。作者と私の長生き競争だもん(笑)。
冒頭、ボッシュ元刑事は先輩刑事の葬儀に出席。そこで未亡人から未解決事件の調書をあずかる。亡くなった先輩刑事がこっそりずっと持っていたらしい。
路地裏で射殺された青年の事件だが、ギャングの仕業らしかった。なぜ先輩刑事は、この未解決事件をずっと抱えていたのか。
一方、ボッシュの異母兄弟のハラー弁護士は、モンゴメリー判事殺人事件の被疑者の弁護にあたっていた。モンゴメリー判事は公園で刺殺されたのだが、その犯人は精神的に虚弱で、刑事の脅迫におびえて自白しただけだった。
ボッシュの協力を得てハラー弁護士は被告の無罪を勝ち取ったが、ボッシュは「真犯人はいまでも町を歩いている」として、この事件を独自捜査する。
一方、レイトショー(深夜勤)のバラード刑事は、ホームレスの男が焼死体で発見された事件の捜査をおこなっていた。
ボッシュは先輩刑事の未解決事件の捜査をバラードの協力のもと、進める。この事件は、妙なことにまともに捜査されていない。
動機が被害者青年が服役したとき、同じ房にいたギャング幹部との同性愛にあったことが判明する。ギャングは出所すると、自分の汚辱になりそうな同性愛の相手が邪魔になり殺害した。
そして、殺された青年と先輩刑事との関係をボッシュは知って唖然とする。自分に捜査を教えてくれた先輩刑事の闇をボッシュは見ることになった。
バラードはボッシュに協力しながら自分の焼死体事件を捜査していたが、その過程で、ボッシュが追っていたモンゴメリー判事刺殺事件と同じ法律事務所が絡んでいることがわかった。
その法律事務所は不完全な手続きでモンゴメリー判事に恥をかかされた過去があった。
一方、焼死体の青年はある財産家の息子であり、あとを継いだ弟からは遺産を持っていく厄介者だった。そして、この財産家の顧問が例の法律事務所だった。
ボッシュは、自分の白血病の訴訟を頼みたいという理由をでっちあげて、この法律事務所に潜入する。
そこで会った弁護士のスキを盗んで証拠を手に入れたものの、なんとくだんの弁護士が投身自殺してしまう。
自殺を疑ったボッシュとバラード刑事が法律事務所に踏み込むと、そこに待っていたのは女の殺し屋だった。。。
これはTVシリーズ「BOSHE legasy」の元ネタになっているようだ。アマプラで見られるので、先に見てしまったのである。
おかげで、重層的な事件が進んでいく様子は理解できた。
なんとなく、先にネタバレを見たしまったようで、ちょいとすっきりしないかな。
TVシリーズの「BOSHE」は、小説とまったく同じではないのだが、エピソードそのものは小説を下敷きにしていることは間違いないので、だいたいスジがわかってしまう。
もちろん、たいへん面白い。
ですが、小説は小説で、じっくり活字を追っていく面白さは別格だと思う。
どちらも甲乙つけがたく面白いですが、物語の深さにおいて、やっぱり小説のほうがまさると思う。
評価はもちろん☆☆。
そりゃ、コナリーであるからね。一個星を減らしたのは、TVを先に見てしまったから(笑)
「死ぬまで読む」と宣言したが、ほんとにそろそろ主人公ボッシュもやばくなってきている。
膝を人工関節に置換する手術を受けた上に、本書では以前のセシウム盗難事件(死角)の影響で白血病まで発病している。もっとも症状は緩やかなようで、今は投薬治療で抑えられてはいるようである。
主人公がリアル世界と同時に年をとるボッシュシリーズでは、ボッシュの年齢は69歳、そろそろ古希だそうで、どうしたって終焉が近づいているだろう。
読者の私がボッシュを読み始めたのが30代だったのだ。もう20年以上経つのだから。
もちろん、著者のコナリーも年をとる。
時は過ぎ去ったのだなあ、と思うほかない。
もしも、私が今、あの赤羽で過ごした30代の頃に戻れるとしたら、やっぱり同じようにサラリーマンとして働いて、金曜日に駅前の本屋でボッシュシリーズを買って週末に読む生活をする。
間違いなく、そうする。
私にとって、それが楽しい生活だったんだ、と今になって気がついている。