自民党の谷垣総裁は「想定を超えた自然災害が起きたとき、原発をどう押さえ込むか十分ではなかった。過去の政策に盲点があったことは否定できない」と述べたそうである。
私には、ごく普通の見解のように思われるが、ここで元気づく人もいるわけである。
「原発は、自民党が推進してきたんじゃないか!民主党は、その尻ぬぐいをしているだけだ!」とね。
私にいわせりゃ、これもおかしな話である。
民主党政権下になって2年経つが、その間も、民主党だって原発推進に全力であたっていたのだ。
鳩山元首相の、なんの根拠もなくCO2削減25%を国際公約しちまった件なんぞ、最悪である。誰が考えたって、原発推進するほかに方法がない。もっとも、民主党はいまだに「チャレンジ25」の看板を下ろしていない。太陽光と節電で、25%できるわけがないじゃないか、この隠蔽国家権力めが(苦笑)
まじめに原発抜きで、チャレンジ25ができると思っていたらウマシカさんであるけど。
閑話休題。
被災者救済スキームも、いまだに決着をみていない。東電の責任をどこまで追求するか、である。
この問題を、すごく簡単に、かつ乱暴にまとめてしまうと。
もしも原発事故が「人災」なら、東電の責任は大。こんな会社、つぶしてしまえ、という意見にもなる。
つまり、原発事故は防げた、震災時の対応がダメだったとなる。この場合、菅政権の責任は重大。
責任とって、とっとと退陣しろ、である。
一方で、原発事故が「天災」の場合。
これは、なにをやってもダメだったのであり、つまりは原発の存在そのものが悪。つまり、菅政権に責任なし。
責任があるとすれば、えんえんと危ない原発を作り続けた自民党、となる。
東電は生き延びて、税金で処理。民主党の結論は「みんな過去の自民党の負の遺産」となる。菅総理の十八番フレーズですなあ。
こういう論理があるので、だいたい自民党支持者が「原発を停止するなんてとんでもない、女川原発は無事だったじゃないか、これは人災だ、菅は責任とれ」という主張に傾く理由だし、一方の民主党は「利権まみれで原発を作り続けた自民党と官僚政治をまず反省しろ、あの特殊法人はいったいいくつあるんだ、後始末だけさせやがって」となる。
だから、国家権力寄りのスタンス(つまり民主党)であれば、当然に東電処理は甘くなるし、与謝野発言のように「なんら東電に責任なし。株主もセーフ。被災者救済は税金で」となる。それが理の当然。
もっとも、財源がないので、消費税を上げる腹である。
以上だが、つまりは、この程度の政局発言ばかりだ、ということなのである。国難のときに、いったい何を考えておるのかねえ。情けないよ。
まず、話を整理すると。
そもそも、太陽光パネルの量産が進み、なんとかなってきたのは、この数年にすぎず、しかも今でも発電コストはあまり安いといえない。
かつて、オイルショックで狂乱物価を経験したときは、石油が買えないから計画停電をしたが、その時に太陽光発電なんてない。
増大する電力需要をまかない、かつ石油一極依存をさけるべく、原発を推進したのはそれなりに理にかなっている。
ただし、その後、原発は利権化していったわけである。ついでにいえば、反原発も利権化した。反原発派をなだめるために、周辺対策費が捻出され、それが反原発ビジネスにもなったからだ。
こんなのは、目くそ鼻くその世界である。
しかしながら、現在、この大事故を鑑みて、まだ原発推進を考えるのは、政治センスを疑う。「しばらくムリ」と思うのが当然である。
それとも、次の選挙で「原発推進します」といって当選できますか?あり得ないでしょうが。
おまけに、最終処理場すら見込みがたっていない。トイレのない家を建てて、いよいよ便所がつまってきたといって騒いでいる状態なのだ。
その最終処分にかかるコストも、実は発電コストに乗っていない。原発建設よりも遙かに「周辺対策費」が必要になりそうで、おまけに事故対策費まで勘定すると、ホントに安い電源なのかどうか、分からなくなってきた。ただ、今までは、そういう費用はすべて政府勘定=税金だったので、わからなかっただけである。税金は、つまりは国民負担なので、早い話が電力会社の請求書にのる金額の一分が税金の納付書に化けたのである。
日本の電気料金は、「安い原発」を使っているはずなのに、国際比較で見ると高い。しかも、今指摘したように、隠れコストが政府負担になっているから、実はさらに安くないとおかしいのだが。
だとしたら、その高い料金は、いったいどこに消えたのか?決まっているが、つまり利権である。
思うに、自民党に必要なのは、過去の否定じゃなくて、今、この状況で、きちんとした判断力を見せることだと思う。
「そのときは適切な判断だった、今はそうとは言えない」冒頭の谷垣発言でまったく正しいではないか。
考えてみてもらいたい。今の国内原発は、今度の震災で続々「点検」に入っているが、そうすると夏まで立ち上がらないのだよ。止めたら動かすのが大変、動かしたら止めるのが大変、それで後始末はさらに大変、それが原発技術というもんである。
電気が簡単に蓄電できないことは誰でも知っているが、原発は出力の可変が難しいから、火力発電が発電能力を調整している。石油なしでは、そもそも原発が動かないしね(苦笑)
それでも、ほかにないので、今までなんとかやってきた。
そこそこ実績も積んできたので、外国に売ることも考えた。
しかし、である。今更、ベトナムやインドが日本の原発を買う可能性はゼロ。こんな大宣伝(!)をして、いったい誰が地元を説得できるのか?
あなたがインドの首相だとして、地元民に「日本の原発は安全」と説明して、みんなが納得すると思いますか(苦笑)
日本は今や、世界一の「公害垂れ流し国家」である。諸外国みんなが「なんとかしろよ、この野郎」と思っているのだ。
そこで「いや、これからは気をつけます、許してください」で「じゃあ、また推進します」といえば、はてさてどうなることやら。
世界は当面、火力に比重を置くが、CO2問題もあるので、石炭、石油ではなくて、環境に優しいLNGを使う。すると、LNGの価格が上がる。
ロシヤはますます強気になって、北方領土支配を強める、というわけだ。
おまけに、大量の汚染物質を、もしも国内に処分できなきゃ、シベリアにでも泣きついて埋めてもらうほかないかもしれない。
原発は、今や外交すら、にっちもさっちもいかなくしてしまった。
もっとも民主党政権で、外交は既にダメダメだったんだけどさ(苦笑)
民主党は、今や推進も代替も言えない。
事態の収拾もできなくて推進なんて言えば既知外沙汰であるし、代替などと言ったって「じゃあ、具体的に停電どうするんですか」とつっこまれる。
与党なんだから、ちゃんと計画を示せ、予算を示せ。できるわけがないじゃんか(笑)
自民党は、こんなところで争点化してはいけない。せっかく野党なんだから。
事態の収拾には全力で協力する一方、東電は大掃除する。あれとつるむと、自民党も腐る。ダメである。
その上で、既存の原発は安全管理を徹底しつつ運転継続し、一方で代替エネルギーを開発します、といえばいい。
谷垣総裁の発言は、悪くはないと思うのだ。
ただし、いささか「素直すぎる」のだけどね。
勝負師としては、この人はダメだろう。
ご本人の趣味の自転車レースでいえば、あくまでアシストレーサーだ。
強力なエースが、、、これもいない、のですなあ。。。