Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

天国までの100マイル

「天国までの100マイル」浅田次郎

この作家の浪花節は、私にはわかりきっている。その手は桑名の焼き蛤じゃ。
実にくさい、みえみえの展開じゃねえか。わかりきっておるわ。もうだまされぬ。いつもそう思う。


主人公の城所安男は、4人兄弟の末っ子である。
出来は悪かったが、バブルのときに不動産屋で一発あてて「風呂屋みたいな家」を建てた。
ところが、その後のバブル崩壊であっけなく会社は倒産。
金の切れ目が縁の切れ目で、女房とは離婚、子供をつれて出て行った。
仕方がないので、人のよい友人の会社でお情けの営業マン、成績はビリである。
毎月30万の生活費を送金すると、ビタ一文残らない。
そんな安男が生きていけるのは、羽振りのよいときに銀座で知り合ったホステス、マリのおかげである。マリは器量のよいほうではないが、安男を気に入り、いつも部屋に入り浸っている彼を保護している。
その安男の年老いた母が、心臓病が悪化して、余命いくばくもなさそうだ、という話になった。
もう高齢だし、手術も難しいというので、それぞれ成功している兄弟たちは、無理せず内科治療で経過をみようという。
安男は反発する。父親がいなく、母親だけで6畳一間の安アパートで懸命に働き、4人の子供を立派に育てた。その母ちゃんを見捨てるのか。
そして、はるか千葉の外房にあるサンマルコ病院に、凄腕の医師がいるときき、そこまでの100マイルを自分で送り届ける、という。
転院の場合は、救急車は使えないのである。
安男は、周りに土下座してまわり、社長に営業者のバンをかり、借金取りにカネを借りて、はるか外房までの100マイルを走る。
そこに、ついに病院はあった。
海岸で釣りをしていた怪しい猟師のような男が、その心臓外科医であった。
「よし、おまえのかあちゃん、治してやる!」
外科医は吼えて、ついに安男の母は手術室へ。。。


ストーリーは単純である。
どこにも、複雑な話は転がっていない。
しかし、この話はまずい。
まず、主人公の安男の今の状況がまずい。バブル崩壊で尾羽を打ち枯らして、、、まるで、あのときの自分みたいだ、そう思う。
その上、年老いた母親がまずい。貧乏な中で、懸命に子供を育てた母は、今、病で苦しんでおり、そして「もう年だから、充分よ」といい、しかし、いまだ子供のことを気にしている。
これは、とってもまずい。

また、これだよ。
まったく、あざとい真似をしやがる。ついつい、泣かされちまうじゃねえか。
なんてきたねえ手を使いやがるんだ。
だから、浅田次郎なんて野郎は、ろくなもんじゃねえんだ。
前々から、思っているけどな。

ああ?評価?
んー、まあ☆☆でもつけといてやれ。
え?良い評価だって?文句さんざん並べて、だと。

仕方ねえだろ、こんなに泣かされちゃあよう。
手の内はわかっちゃいるんだがよう。どうにもこうにも、仕方ねえじゃねえか。
ちっ。