Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

惑星CB-8越冬隊

「惑星CB-8越冬隊」谷甲州

夏休みに帰省したときに、大学時代の本書を再読。
懐かしいと同時に、今更ながら「よく書けているなあ」と感心。
これが谷甲州の処女作なのだからすごい。

一応、分野的にはハードSFということになってはいるが、今の分類ではハードSFとは言えないように思う。
話としては、遠い未来の宇宙で、銀河系に広がった人類(植民地惑星を多数開拓している)が、あらたに惑星CB-8に植民するための調査に来ており、そこで越冬するという運びである。
惑星CB-8は、楕円軌道を描いており、冬の期間が厳しい。
その環境を作り替える(テラフォーミング)ために人口太陽を打ち上げている。
ところが、惑星CB-8の地表は、まるで豆腐のように柔らかく変形するものだった。そのため、遠日点に近づくにつれて変形してしまう。
すると人口太陽との距離が変わって、テラフォーミングが失敗する。
人工太陽のスイッチを切るために、空路でいったん脱出した極地の前進基地に、陸路で戻らなければならない。
陸路といっても、そこは極寒の地であり、まるでエベレスト登山なみの苦労があるわけである。
本書では、その苦闘ぶりをリアルに描く。
著者は、実際にチベットでの勤務体験があるので、その描写が非常にリアルである。

評価は☆。
あまり作品の多い作家ではないと思うが、この作品は残るのではないかなあ。
こういう骨太な作風は、昨今では珍しい。

実は、大学生のときは「なんだか、えんえんと登山ごっこをやっているなあ」くらいの感覚しかなかったのである。
当時は「実体験派」の小説を、高く評価していなかったのだ。
昔の小説を読み返すと、どうも、自分自身の変化を発見することになるらしい。
そういう意味で、まことに面白い体験であった。
ほかの作品も読み返すか、それとも、もう少し後にとっておこうか。
色々と考えるところなのである。