Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

レイトショー

「レイトショー」マイクル・コナリー

コナリーといえばボッシュシリーズというわけで、ずっと飽きずに追いかけて読んでいるのだが、この本は新シリーズなのだ。
コナリー先生、還暦を迎えるにあたり新シリーズをスタートさせる、ということ。
このエネルギーはすごい。私も枯れている場合じゃないのかもしらん。

で、本書の主人公は女性刑事バラード。ハワイ出身、独身の三十代。人種的には浅黒いほうで、非白人である。
レイトショーというのは警察内部の隠語で、ようは深夜勤務のことだ。
夜間にも事件は起こるので(むしろ多いかも)それらの初動捜査を受け持つ。
で、捜査資料はそのまま昼のチームに引き渡される。圧倒的に昼間に動いている人間が多いのだから仕方がない。
つまり、彼ら「レイトショー」チームは、一つの事件を最後まで追って解決するのはレアケースである。

ある日、バラード刑事は女装した男性(心は女性、というやつだ)が道路で殴られ、引きずられて大怪我している事件に遭遇する。
怪我の具合を見ると、ただの事故ではなくて、何者かに暴行を受けたのが明らかだった。
殴られた痕跡がふつうでなく、「ブラスナックル」と呼ばれる凶器であるらしいことがわかる。
この線からバラードはこの事件を追うことにする。
その同じ夜に、ナイトクラブで5人の男が射殺される事件もおこる。
現場に駆けつけると、そこには元パートナーの刑事がいた。
実は、バラードは上司からセクハラを受け、その現場を元パートナーが目撃していたのだ。
バラードは上司を告発するが、元パートナーが証言を拒否。
結局、告発は失敗に終わり、バラードはレイトショーのチームに飛ばされたという経緯があった。
元パートナーは現場検証をしているようだったが、そこで、バラードは不自然な動きを目撃する。なにかを、証拠用のビニール袋に入れたようなのだが。。。

バラードはブラスナックルの線から、過去の事件をデータベースで調べ、ブラスナックルの不法所持で捕まった男を探し出す。
その男は中古車販売のセールスマンをしていた。
バラードは客のふりをして、セールスマンに近づく。
このセールスマンは、実は連続誘拐暴行の常習犯だった。離婚歴がある。
セールスマンの元妻からセールスマンについての聴取をした帰路、バラードはセールスマンに誘拐されてしまう。
気がつくと、セールスマンの自宅で縛られていた。
セールスマンは元妻もさらいに出かけるが、そのスキにバラードは脱出に成功し、即席のナイフで犯人と対峙、犯人を返り討ちにする。
自衛のためとはいえ、犯人を殺す結果になったバラードだが、ある圧力を利用してすぐに現場復帰。
それにしても、バラードの行動が犯人にばれていたのはなぜか?
バラードは、それがナイトクラブでの事件と結びついていることを悟る。
ナイトクラブ事件の犯人は、警察内部におり、バラードが「何か」を掴んでいるため、彼女を始末しようとしたのではないか?
バラードは、ナイトクラブの光景をもう一度思い出そうとする。。。


読み始めると、もう止まらない。
コナリー健在。
女性刑事バラードはなかなか魅力的である。
続刊も出ているようだ。これは読むしかないな。
評価は☆☆。コナリーだから、当然だ。

コナリーが還暦で新シリーズを始めた理由は、ボッシュの年齢も一因であろうと思う。
ボッシュシリーズは、「サザエさん」のように時間が止まっておらず、作者とともに年齢を重ねている。
つまり、すでにロサンゼルス警察を早期退職し、今度は嘱託勤務で働いている状態である。
嘱託勤務の延長制度はあるとはいえ、それも終わりが近づいている。
このままでは、ボッシュは齢70目前の私立探偵ということになってしまう。
作者とともに年齢を重ねるボッシュにはファンが多いが、しかし、これは当然にボッシュの活躍の終わりが近づくことにもなる。
もちろん小説だから、これから「若かりし日の思い出」を語っても良いのだが、やっぱりボッシュのイメージではない。
おそらく、コナリーは還暦を過ぎてもますます健筆というわけで、主人公の若返りが必要になったのであろう。
どうせなら、というわけで、非白人の女性刑事にしたのではないか。
白人の若い男性だと、どうしてもボッシュの若かりし頃と重なってしまう。それを避けるためだろう。
まあ、なんにせよ、コナリーファンの読者としては、まだまだコナリーが書く気まんまんだと分かって嬉しい限りである。
それにしても、小説というのは、老いたり若返ったり、男になったり女になったり。便利なものである。
よし、この際なので、私の負けずに還暦を前にしていよいよ執筆開始、、、なわけはない(苦笑)
ああ、でも、やっぱり官能小説を一度書いてみたいとは思っているんですがね。
はてさて、いつになることか。
都内の自宅で孤独死しているところを発見された男の机の上には、書きかけの官能小説が、、、なんて話になりそうですなあ。