Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

訣別

「訣別」マイクル・コナリー

またもやボッシュシリーズ。
昨年落っこちた試験のリベンジをしないといけないので、また試験勉強をしないといけない。
その前に、たまったコナリーを読む。
試験勉強中は「コナリー絶ち」をして、試験終了後の楽しみにするのだ。
今、願掛けをするのならコナリー以外にありえない。

今回は、私立探偵券非常勤ボランティアでサンフェルナンド市警刑事のボッシュが、まず私立探偵の仕事で大金持ちのヴァンスから、大学時代に分かれたガールフレンドに自分の直系の子供がいないか、捜査してほしいと依頼を受ける。
ヴァンスは高齢で、できれば遺産を直系の子供に譲りたいと考えている。彼は独身で結婚したことはなく、子供もいないのだ。
ボッシュはさっそくヴァンスの大学時代のメキシコ人のガールフレンドの足取りをたどり、どうやら彼女がヴァンスの子供を出産し、養育院にあずけていたことを探り出す。
養育院に預けられた子供は、すぐに特殊養子縁組されて、他の家の子供になる。
ボッシュは、その子供のあとをたどり始める。
その後、ヴァンスから手紙と万年筆が届く。
万年筆は先祖伝来の品で、手紙は遺言状になっており、長年仕えた秘書に1000万ドル、残額をすべて子供に譲ると書かれていた。巨額の財産である。
ところが、ボッシュが探り出した子供はすぐにベトナム戦争に出征し、なんと現地でヘリが撃墜されて戦死していた。
そのヘリを製造していたのはヴァンスの会社だった。
しかし、ボッシュは、不幸な最後を遂げた子供が、秘密裏に休暇期間中にアメリカに極秘帰国したいたことを掴む。
本来、兵士は休暇期間でも米国に帰国することは禁じられている。しかし、ボッシュ自身がベトナム出征の経験者であり、しばしば、極秘帰国が行われていたことを知っていた。
その理由は、恋人に会うためである。ボッシュは、死んだヴァンスの子供は、ガールフレンドに会うために帰国していたのに違いないと見当をつけた。
一方、ボッシュがボランティアで奉職するさんフェルナンド市警では、連続レイプ事件が発生している。
この事件が同一犯の仕業であることを見破ったボッシュは、さらに、おかしな共通点に気がつく。
被害者はみな、カレンダーに排卵日を記入している女性ばかりだったのである。
どうして、犯人はカレンダーを知っているのか?たまたま侵入した室内でカレンダーを見たのか?それにしては、連続はおかしい。
ボッシュは、やがて、犯人についてある仮説を持つ。犯人は、下見が可能な職業についているやつなのである。
そのかたわら、ヴァンスが急死し、しかも検視の結果、どうやら何者かに窒息させられて殺されたらしいと判明する。
ボッシュは、ふたつの事件を並行して追うことになる。
ヴァンスの子孫は存在しているのか?
そして、連続レイプ犯は誰なのか?
やがて、ボッシュの同僚刑事がレイプ犯の襲撃に遭い、その救出のためボッシュは走る。。。


いやー、やっぱりコナリーだね。
2つの事件が並行して進むのだが、精力的に一歩一歩、真相に近づくボッシュの活躍がすばらしい。
行き着くヒマもない展開。
これぞ、エンタメじゃないか。評価は安定の☆☆。

それにしても、ボッシュもすでに65歳か。
日本の65歳もそうだが、アメリカの65歳も元気なものである。
もちろん、若者と同じように走ることはできないけど、年代物のクライスラーのチェロキーを飛ばして現場に急行するぐらいはできる。
もちろん、拳銃を撃つこともできる。
まだまだボッシュシリーズが続きそうなのはありがたい。
もちろん、後期高齢者になっても走るわけにはいかないだろうから、あと10年はいかないと思うが。
コナリー氏の健筆を期待するのみである。

以前にも書いたけど、小説の登場人物が読者とともに年齢を重ねるのはありがたい話だ。
ずっと親近感を保ち続けられるからだ。
サザエさんのように、いつまでも時が止まっている世界もあるだろうけど、刑事モノでそれはどうだろう?
いつまで経っても携帯電話も登場せず、なにかあると公衆電話に走る刑事を、ずっと書き続けられるものだろうか。
やがて老いて、静かに退場していくほうが、物語としては自然に思える。
ハードボイルドは大人の童話なのだそうだが、それでも、サザエさんになっては困ると思うのだ。
思えば、あやういバランスの上に成立しているジャンルだなあ、と感じるのである。