昨日はずっと雨。なので、心置きなく読書タイムにする。ずっと「積ん読」だったコナリーを出して読む。
アメリカの年越しでは、ちょいとやんちゃな連中が空に向けて景気づけに拳銃をぶっぱなす。すると、引力の法則により、弾丸はいつか落ちてくる。運の悪い人がそれにあたって怪我をする。
ある男が脳天に弾丸をくらって、そういう不運だと思われた。しかし、若き混血女性のバラード刑事は、その脳天の弾痕の周囲の髪が焦げているのを発見する。殺人事件としてバラードは捜査を開始する。その男の周囲を調べているうちに、この男が過去の未解決事件に関係しており、それをボッシュ元刑事が捜査していたことを知り、ボッシュのもとを訪ね、この事件の捜査への協力を取り付ける。
実は、ロス市警はロイド・ジョージ事件もあり、コロナ禍もあって、もはや事件捜査への意欲を失い、ただ平穏無事に定年まで過ごせれば良いという警官であふれるようになっていた。殺人課に事件が回されても、解決される見込みは薄かった。なので、バラード刑事は事件を自分の手元においたまま捜査することを希望して受理された。
一方、同じ時期に「ミッドナイト・メン」という渾名がつけられた婦女暴行犯の二人組があった。女性の訴えによると、彼らは夜中に侵入し、覆面をつけたままで、被害者にも覆面をさせて暴行するという手口だった。しかし、バラード刑事が組んでいるムーア刑事は、シングルマザーでボーイフレンドとのデートのほうが大切だった。バラード刑事はムーア刑事に期待するのを諦めて、独自に捜査を続ける。すると、思わぬ手がかりが浮上した。どうも、二人組は侵入前に入念な下見をして、街灯を壊しているらしい。
あらたなターゲット候補を見つけたバラード刑事は、ボッシュに彼女の保護を頼んで、被害者候補になりすまして犯人を待つ。そこに、二人組が侵入してくる。。。
いつものコナリー節。
複数事件が並行して進んでいくのも、おなじみである。引退したボッシュと、若き女系刑事のバラードの掛け合いも安心感がある。
評価は☆☆。
まあ、水戸黄門か寅さんみたいなもので、展開はだいたい読めてしまうのだが、それがいいのだ。コナリーのシリーズも30冊を超えているわけで、ついてきた読者にとっては「待ってました!大明神」みたいなものだからなあ。
しかし、冷静になってみると、これはなかなかすごい事態である。
コナリーのような還暦を過ぎた(すでに67歳だ!)が、毎年2冊、きっちりと新作を上梓して、それがちゃんと売れている。
となると、新人ミステリ作家は、コナリーが基準になってしまうわけで、これと少なくとも同等くらいに面白いものを書かないといけないわけだ。出版社にとっては、安定のコナリーがいるのだから、訳のわからん新人で勝負する必要が薄くなってしまう。
若手の登用を妨げる老害ではない。ほんとうに質が確保されていて、面白いのだ。
若手作家にとっては、大迷惑ではないか。
コナリーがいつまで新作を書いてくれるのかわからないし、翻訳がいつまで続くのかもわからない。しかし、順調に訳出が進んでいることを見ると、ある程度は手堅く売れているのだろうと思う。
私も、40になったあたりから、ずっとコナリーを読み続けてきた。もはや人生の友である。最後まで、付き合っていきたいと思っている。