ブラジルでは、先日の大統領選挙でルラ候補がボルソナロ候補を破って大統領に返り咲き。で、ボルソナロ支持者1500人が議会を襲撃する事件を起こした。
理由は「選挙は不正」だから、である。
ボルソナロ元大統領は米国滞在中で、襲撃事件の犯人らを非難する声明を出したあと、入院してしまった。
この事件、あのトランプ元大統領のときの事件とうり二つである。
まず、落選した大統領が右派、というよりは、極右と言われるタイプの人であること。
選挙は不正である、と襲撃犯側が主張していること。
この襲撃犯らが、どうやらSNSでつながっており、陰謀論を信じているらしいことである。
つまり、本人たちは本当に選挙で不正が働かれた、と信じており、それ以上に大手マスコミの報道を信用せず、一方でSNSで流れてくる情報は信じ込んで(本人たちが選挙の不正の現場を確認して証拠を掴んだ、ということはないのだ)当然に自分は正しいと信じ込んでることなのである。
なんというか、ある意味ではほんとに正義感に溢れた、けど、ちょいとずれている「残念な人たち」なのだ。
もちろん、いつの時代にもこんな人達はいたはずなのだ。しかし、今の世の中は困ったことにSNSというものがある。このSNSというのは、一言で言えば「同じ穴の狢」同士を結びつけるツールである。類は友を呼ぶを電子化したのがSNSである。
そうすると、SNSでつながっている「覚醒した(と本人は思ってる)仲間」の情報によれば、選挙は不正に盗まれている。それはきっと、ユダヤ金融資本のたくらみなのだ。で、ユダ金と戦うボルソナロは正しい。ついでに言えばコロナは風邪で、これも陰謀である。ワクチンを打てば、そのうち死ぬ。そういう世界的な陰謀なのだ、、、と信じている。オレの婆ちゃんも母ちゃんも、なんなら兄弟も従兄弟も、同じ職場のやつらがほとんど打ったのになぜ誰も死んでないのだ、オレの上司も打ったがいまだにピンピンしている、ふざけんなと言ってもそういうのは見ないことになっている。
現実よりもスマホなのだろうな。
何しろ、類友なので、毎日スマホでSNSをチェックするたびに自分の考えは正しいと確信させてくれるのだ。で、テレビは嘘ばかり放送している、となる。つくづく世も末である。
日本にも選挙不正の議論があった。投票を自動集計する機械、ムサシに不正プログラムがあって選挙結果は操作されている、というのである。で、ご多分にもれず、SNSだのブログだのでつながっている仲間の意見を見ていると、とてもこんな結果になるとは思えない、と言っているわけだ。
あのなあ、、、、と言いたいところである(苦笑)。そら、アンタと同好の士ばかりが集まっているんだから、ねえ。。。
この手の議論がただの陰謀論だということはすぐに分かった。だって、そりゃ私の会社の事業分野であるからですね(苦笑)ほぼ、間違いなく事前調査と開票結果は一致するわけで、不正なんかないということはすぐに分かる。
(実は、ある選挙区で○明党が裏切り、現職議員が落選したことがあった。データ上ですぐにわかった。こんなのは例外である)
大真面目に陰謀論を信じている人を見て、なんでこうなのか?を考えていたら、理由が判明した。
SNSの最大の問題点の根本は、取材能力がないことである。
ほんとうに取材能力があるやつは、業務上の機密情報だったり特殊な立場にいたりするわけで、うっかりSNSに「真実」などをばらまくわけにいかないではないか。
その証拠に、卑近な芸能人のスキャンダルですら、SNSで真実が暴露されることはめったになく、ほとんどセンテンススプリングの上をいかないのである。(唯一直接取材といえるのがガーシーだったので話題になった、、、がそろそろネタ切れらしい)
ましてや、国家機密をや。
かくて、SNS上には有象無象の妄想をもとにした「拡散希望」だけがばらまかれる。それを信じる人達が、ついに議会に突入する。地獄絵図である。
スパイの仕事は、その国の公式情報、テレビ、ラジオ、新聞の情報を丁寧に収集分析することが8割と聞いたことがある。インテリジェンスの基本なのだそうである。
考えてみれば、理由は単純だ。それらの機関は少なくとも、取材力を持っている。
それをどう分析するかで、知見が問われるだけだ。
マスコミは信じすぎてはだめだけど、SNSはもっと信じちゃだめでしょ。
あーあー、やっちゃったなあ、と思うばかりですねえ。