Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

わたしたちが孤児だったころ

わたしたちが孤児だったころカズオ・イシグロ

 

今やノーベル賞作家となったk.イシグロであるが、私がこの人の本を最初に読んだのは「日の名残り」であった。心に染み入る名品だった。「わたしを離さないで」には泣かされた。SF作品として、あの「アルジャーノンに花束を」に匹敵する名品であると自信をもって断言できる。

年末の読書で何を読もうかと考えて、この本を選んだ。

 

主人公は英国人のバンクスで、舞台は戦前の上海。バンクスの幼いころの愛称はパフィンである。パフィンは、上海の外国人租界で育った。隣家の日本人の混血児、アキオとは大の仲良しだった。父は貿易会社の重役だったが、この会社の扱い商品はアヘンであった。母は、反アヘン運動に共感し、父を責めるようになる。

そんなある日、父が失踪する。警察が捜査するが、父の行方は見つからない。まだ幼いパフィンは父の失踪という事態が理解できず、アキオと父の救出ごっこをして遊ぶ。そこに、叔父がやってきて、パフィンを街に連れ出す。そして、外出先でパフィンを置き去りにしてどこかへ行ってしまう。パフィンは独力で家に帰るが、家の中はもぬけのからだった。孤児になったパフィンは、英国に住む叔母に引き取られることになる。

パフィンは英国で成長してバンクス青年となり、やがて探偵として有名になる。社交界にも新進気鋭の私立探偵としてデビューし、大いに名声を得る。

そんなバンクスのもとに、上海にいる父母の居場所がわかったという情報が入って、バンクスは再び上海に赴く。その上海は、昔日とは変わって、日本軍と国民党と共産党が戦争状態を作り出しており、外国人租界もいつ戦火に包まれるかわからない状況であった。危険な状況の中だが、バンクスは父母が囚われているという家に苦労しながら向かう。すると、途中で日本軍の兵隊となって負傷しているアキオに出会う。アキオとバンクスは助けあいながら家に向かうが、現場にはすでに何もなく、そこに日本軍がやってくる。日本軍とアキオは何かを話し合い、バンクスは無事に英国領事館に送り届けられる。

すると、そこに、バンクスの叔父が待っていた。叔父は、あの日、母が去ってバンクスが孤児になった事件の真相を語り始める。。。

 

ラストに至って、バンクスは母に再会するのだが、その情景はたいへん悲しいものである。と同時に、母親の愛を痛切に感じる場面である。すでにバンクスのことがわからなくなっている母が「パフィンです」と名乗った途端に豹変する。胸が痛くなるシーンである。

評価は☆☆。

やっぱりカズオ・イシグロだねえ。

 

自分は、ついに人の親になる人生を持てなかったので、単に母の愛を受けるだけでおわってしまった。母から受け取った愛については、どうにも返しようがないほどだと感じる。幸い、母はまだ存命である。

この正月は帰省しなかったのですが、少し落ち着いたら、そのうち、懐かしい故郷で暮らす母のもとに帰ってこようと思います。