Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

帰りたくない! 神楽坂下書店員フーテン日記

「帰りたくない! 神楽坂下書店員フーテン日記」茶木 則雄。

飯田橋から歩いてすぐ、神楽坂下のミステリ専門書店「深夜プラス1」が開店したときは「ミステリ専門書店なんて、やっていけるんだろうか?」と思ったものだ。
しかし、世にミステリ好きは多いようで、ファンの間でこの書店は「聖地」となって存続している、、、ように思う。(笑)
いや、実際の話、出版業界は「構造不況業種」だからして、書店は大変なのだな。

その有名なミステリ専門書店「深夜プラス1」の初代名物書店員、茶木則雄氏の抱腹絶倒エッセイ。

この人、まさに破綻的性格だ。何しろ、ギャンブル狂いで、ギャンブルを始めたら身動きがつかない。お正月に、家庭内で手持ちぶさたのあまり近所の雀荘に出かけて(ここまでは良い、、、と思うが)そのまま3連泊した日には、それは家に入れてもらえなくても当然だと思う。
はい、タイプミスじゃありませんよ。「3連チャン」じゃなくて「3連泊」ですよ!
雀荘で「お雑煮が出た」って、あんた、ねぇ。。。

だいたい、大学を中退した理由が
「授業があるんですけど。。。」
「それがどうした。勉強はまたできる。今日の配牌は今日しか来んぞ」
で単位不足、結局1年生を4回やっておしまいというのだから、恐れ入るより他にない。

息子さんとの心温まる交流なんかも面白い。子供の相手をするよう奥さんに依頼されるものの、何をして遊んでやればいいか分からない(ここまでは、世間の父親に多いと思う)そこで氏は、なんとドンブリを用意して「ちんちろりん」を教え込むのだ。あげくに、せっかくの子供の貯金を巻き上げようと企む。もちろん、奥さんにばれて一巻の終わり(笑)

前編、ミステリネタがちょろちょろとあって、ミステリファンは思わず「ニヤリ」とするセリフが多い。だけど、全然、知識が無くたって、氏の破天荒なギャンブル狂ぶりは充分面白く読める。

氏は、この本の連載中に「深夜プラス1」を辞して、ペン1本で食べていく決意をする。
その後紆余曲折があり、今また、別の書店の書店員をなさっているそうだ。
「私に書店員は向いている」
と茶木氏は書く。
たしかに、氏が書店員に向いていることを、氏の周囲の人はみな認めている。そうでなければ、ただのろくでなしである。その氏が、再び書店を職場と定めて頑張っていることに、なんとなく安心感を覚える。
自分に向いた職業がひとつ見つかりさえすれば、少々性格が破綻しても人は生きていけるということか(笑)

評価は☆。
軽妙なユーモア、気の利いたセリフ、そのなかに家族の交流が気持ちよく書き込まれている。
疲れたときにピッタリの、肩の凝らない上質のエッセイだと思う。