Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

姉歯元建築士の妻の自殺を悼む

姉歯建築士の奥様が自殺をされた。
心からご冥福をお祈りする。

今から思えば、事件について本当のことを語る勇気を持っていたのは、姉歯氏一人だったようにも思える。彼だけが、最後に建築士としての矜恃を残していたと思う。それはボロボロに傷ついていたけど。
その姉歯氏は、国会の参考人招致において
「妻が病気がちであり、仕事を切られることはできなかった」と、動機について証言した。
この証言を聞いた妻の心中は、いかばかりであったであろうか。

姉歯氏の事件後、私は「江戸時代なら磔刑でなく切腹差し許すべき」だったと書き、姉歯氏は耐震調査の仕事をなさったらどうだろう、などとも書いた。
別に、茶化そうと思ったのではない。真面目にそう思ったのである。
実際に、人間は、罪を犯してしまうことはあるけれど、それでも食べて生きていかなければならないじゃないか。
姉歯氏は、建築士の資格も剥奪され、真実を話せば今まで付き合いのあった業界の連中にも煙たがられよう。きっと、生活にも困っているに違いない。だから死んでしまえ、などということはいけない。それは、あまりに無情なものの考え方である。

彼が犯した罪は経済事犯である。犯罪であるけれど、しょせんはお金の事件である。お金の事件は、お金で解決ができる。たかがお金とは言えない。だけど、人生のやり直しができないことではない。姉歯氏の全財産を取り上げても、そもそも損害額に対していくらの補償もできない。これ以上彼を責めるのは無意味ではないのか。

彼は、ずっと家に帰っていないのだという。妻は、寂しいと周囲に漏らしていたそうである。

姉歯氏に、あなたがこれからも生きていて、ちゃんと仕事をして生活をしていってよいのだと、誰かが伝えてあげるべきだった。彼に、ちゃんと妻のもとへ帰ってすまなかったと伝えるべきですよと、言ってあげるべきだった。苦しいだろうが、それでも生きていきましょうと、伝えてあげるべきだった。

自殺された奥さんは、本当に傷ましい。
今は、姉歯氏の胸中いかばかりかと思う。これから心配である。
世の中には、立派な宗教や主義やら、偉人偉材が考え出したものが沢山あるのに、うっかりと罪を犯してしまった人を救うことができないのだと思う。社会が悪い、政治が悪いなどと言って済むことではない。ただ一人の人を思いやってあげるだけの場所もないのか。それが正義だと言うのなら、そんな正義は無用だと言うばかりである。

たいへん残念で、仕方がない。