Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

サウスポー・キラー

「サウスポー・キラー」水原秀策

おそらく、巨人をモデルにしたと思われる在京の人気球団で、主人公は左腕投手である。どちらかといえばスマートな頭脳的投球をするタイプだ。
その彼が、ある日、まったく身に覚えのないスキャンダルに巻き込まれる。彼には「八百長」の疑いがかかってしまうのだ。その日、彼は運が悪いことに調子が悪くてノックアウトされていた。
自宅謹慎中の期間、誰が自分をこのような目にあわせたのか、彼は独自に調査を開始する。その中で、実は同球団で、左腕投手ばかりがトラブルを起こして次々トレードに出されていることを知る。
いよいよ、明日が名誉回復の登板という日に、彼は何者かに暴行を受けて負傷してしまう。しかし、ここで登板回避すれば、疑いはかかったままである。
彼の潔白を証明する、決死の投球がはじまった。
そして、意外な犯人がついに暴露されて。。。

いわゆる「野球ミステリ」というやつは、意外となかなか難しい。本書は、その難しい世界に挑戦した作品である。著者は本当に野球ファンらしく、細かなプロ野球の描写がなかなか面白い。
野球ファンなら読んでいて飽きないのじゃないかな。

評価は☆。
面白い、という意味で、充分に楽しめる作品。特に野球ファンにはお勧めである。
特に、ラストに明かされる意外な犯人の動機が「なるほどなあ」と思う。だけど、なんだか、前に同じような野球ミステリを、翻訳で読んだ気がするのである。私は記憶力ゼロなので(本当の阿呆ではないかと思う)よく思い出せないのだけれど。

どうも米国のミステリ、というよりはハードボイルドに近い作風を目指しているところが、そういう「既読感」を抱かせてしまう原因なのかもしれないな。
そのあたりが、欲をいえば今ひとつなんである。日本の小説なのに、妙に「翻訳もの」に近い文体を多用する手法。村上春樹が元祖みたいな顔をしているけど、ミステリの世界では都築道夫とか小泉貴美子とか、かなりありふれたテクニックなので、その点は残念に思うのだ。