Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

驚異の発明家の形見函

「驚異の発明家の形見函」アレン・カーズワイル。

パリの骨董オークションで手に入れた、ある発明家(エンジニア)の形見函。その形見函の由来を語る形で、物語は始まる。
主人公はクロード。彼の育った村は、人口が少なく近親婚が繰り返されたために、しばしば奇形が出る。クロードも、指に異様な形の巨大ほくろを持っていた。彼が「痛い」というので、これを心配した領主の尊師(アベ)が医師を呼び、手術を行う。ところが、この医者は自分のコレクションにと、彼の指ごと切り落としてしまうのだ。
アベは激怒するが、そこで、クロードのデッサンの才能を見出す。アベは、彼を屋敷において、そこでクロードに対する教育が始まる。
クロードは才能を発揮するが、アベとの間で誤解が生じて出奔。パリに出て、時計職人を目指す。しかし、徒弟制度の壁に阻まれて、なかなか思うような仕事ができない。しかし、ついに、彼は自分の才能を発揮するべき仕事を見つける。それは、オートマトン(自動人形)つくりであった。
アベとの誤解もとけ、かつての師の再びの導きによって、クロードはついに宿願を果たす。

上下巻であるが、読み始めると一気である。
ストーリーは、海外物にしてはシンプルで、単線である。しかし、この小説の真価はそこではなく、描写の間に挟まれた細部への異様なこだわり、マニエリスムである。
特に18世紀末の博物学という学問が王者であった時代、その時代にどっぷり浸れる、そこが面白さであろう。

評価は☆☆。
どっちかというと、博物学について、少し興味をもっている人が読んだ方が面白いのではないか、と思う。日本の作家であれば、荒俣宏なんかにはまった人には、実にお勧めでありますぞ。

「形見函」というのは、その人の生涯に深いかかわりを持った物を収めた小箱である。
自分が、今もし形見函をつくるとしたら、いったい何が入るだろうか?と考えてみた。たぶんメガネと、自転車のギアと、レコード針と。仕事柄だからパソコンのパーツも入れておきたい。株券は悩むところだが。。。あと、日本酒のチロリですかね、やっぱり(笑)