Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

乱世の名将 治世の名臣

「乱世の名将 治世の名臣」中村彰彦

歴史作家のエッセイで、どちらかといえば歴史に埋もれた人をピックアップした著書である。
冒頭から長野業正をとりあげる。実に渋い。
この人、没落していく山内上杉家をささえて孤軍奮闘、まさに「目の黒いうちは」武田信玄さえ手出しさせなかった名将である。
一方、和歌を解する教養の人でもあったそうなので、まさに天下無双ではないか。
名前は知っていたが、かくまで凄い武将とは思わなかった次第である。

ほかに目立ったところが、明治の陸軍大将、立見尚文である。桑名の幕府軍を率いて「佐幕派最強」と敵の薩長から恐れらた人である。
その後、西南の役、さらに日露戦争でも大活躍。
日露戦争黒溝台会戦では、司令部の大山巌をはじめとして、誰もそれがロシアの本格的侵攻だと考えていなかったところ、唯一派遣された立見部隊が大活躍。包囲せん滅を目指すロシア軍を中央突破するという難しい策を成功させ、見事に撃退した。
これがなかったら、次の奉天会戦を待つまでもなく日本は敗退したはずで、その立見の功績がさほど喧伝されないのは、言うまでもなく彼が薩長閥の人ではなかったためである。

評価は☆。
歴史が好きな人であれば、結構面白く読めると思う次第。

ついでに、ひとつだけ付け加えておくと。
本書のなかに「春日の局 家光の実母説」がある。
歴史家が検証していくと、つじつまの合わないこともあるため(本書の中でも詳しく紹介されている)素人受けはしても、歴史家には相手にされない説である。
しかし、この説が絶えないのは、そうすると色々と説明がつくことも多いからである。
そこで、本書の中で触れられていなかった傍証を、追加でひとつ、あげておこう。

日光の東照宮は、家光が建立したのであるが、そこに家光自身の遺品も納められている。
その中に、家光の守り刀がある。乳母の春日の局にもらった品だという。
その守り刀の銘は「二代将軍 家光」と刻まれているのである。
「三代将軍」ではなくて、はっきりと「二代」と書いてある。
これはどういう意味か?二代将軍は秀忠のはずである。
おそらく、ひとつの解釈として「家光さん、あなたも家康公の二代目なのですよ」と春日の局が告げたという意味にとれるのではないかと思うのである。
どうして、春日の局がそれを知っていたのか?
となると、「自分が母親だから」という説明は、たしかに一番しっくりくるわけである。

はたして真相はどうだったのか?
歴史のロマンは、尽きませんねえ。