Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

税務署が隠したい増税の正体

「税務署が隠したい増税の正体」山田順。

消費者物価指数がわずかながら上昇し、ようやくデフレ基調からの脱却が見えてきたように思える。
しかし、ほんとうにそうだろうか?
私的な感想だが、どうもコストプッシュ型のインフレのようであり、付加価値が増えていないように思える。
人手不足といいながら、時給は上がらず、現場は少ない人手で無理矢理回している。
時給を上げると、経営が厳しいのである。
つまり、コストが上がったから値上げせざるを得ないのであり、利幅は取れていない、ということだ。
あまり良くないインフレであり、このまま物価が上がって給与に反映しないと、スタグフレーションになる。
アベノミクスについていえば、さんざん言われていることだけれども、出口戦略がとっても難しい。

で、そのアベノミクスであるが、スタート当初は調子が良かったが、消費税を8パーセントに上げたところで躓いた、というのは衆目の一致するところだろうと思う。
もしも消費税を5パーセントに据え置いていたら、デフレ脱却は最低2年早まったのではないか、と思う。
返す返すも惜しいことである。

財務省が消費税増税にしゃかりきになるのは、知ってのとおり政府の借金1000兆円だからだ。
おまけに、少子高齢化の進展により、医療費と年金の伸びだけで、毎年1億円の歳出が増えていく。
そこで、なりふり構わない増税が行われることになる。
ただし、消費税のような「見えやすい」増税でなく、「見えにくい」増税である。

まず、各種控除額の引き下げがある。
相続税基礎控除額を下げ、また配偶者特別控除も廃止の流れにある。表向きは「女性活躍社会のため」である。女性に税を課せば、女性が活躍するという超理論である(笑)。
課税最低所得も下げて、年収の少ない非正規雇用も徴税ターゲットにする。
マイナンバーで、収入の追跡も完璧であり、オークション長者もバレバレである。
租税監視条約に加盟して、大金持ちの資産フライトも監視する。
復興特別税制は2.1%が上乗せされているが、13年から25年間なので、25年後に廃止する気はないはずである(笑)。
ちなみに、復興特別税は、一人あたり1000円が別に徴収されている。金額が少ないし、国難ともいえる災害のためだから議論にならないが、事実上の人頭税であろう。
さらに、社会保険料、健康保険税の増税もある。年間負担に引き直すと、消費税の2%アップよりも遙かに大きな額が増税になっているのだが、マスコミの記者自身がサラリーマンで税金天引きの身の上だから、話題にもなりゃしない(苦笑)。
給与明細を見ないで「なんだか、ちょいと減ったか?」なんて言っている連中が社会の木鐸であるから、のんきなもんだねえ。

これでも足りないというので、出国税(海外移住するときに全財産に課税する)やら死亡消費税(相続税とは別に、死亡時の本人の全財産に課税する)まで検討される始末。
おちおち、死んでもいられませんね。

評価は☆。
惜しむらくは、著者が税金の専門家ではないので、イマイチつっこみが甘いところ。

本書の指摘は、小泉内閣を最後に「財政再建」を掲げた内閣はない、ということである。
小泉内閣は「増税なき財政再建」を掲げて、プライマリーバランスの改善を行ったが、その後の内閣については、財政再建については放置プレイである。
リーマンショックの回避だったり、子ども手当なるバラマキ(しかも控除の廃止とセットだったから意味無し、その上、控除は復活せず)だったり、デフレ脱却だったりするのである。
基本的に、役人には「規模を小さくする」発想はないから、財政規模は拡大するしかない。
このままだと、消費税は15パーセントでも足らないと言われているが「そんなの関係ねー」である。
渡辺昇一氏が指摘したように、税は最終的に国家の衰亡を決める。
本書には「国民に重税を課すということは、自由度を奪うことにつながるから、日本は旧ソ連のような社会になりつつあると言えるだろう。」という指摘があるが、その通りだと思う。
なぜ人はお金を欲しがるのか?といえば、そりゃ自由が欲しいからだ。
お金を取られるということは、自由を取られることと同義である。
共産主義が受け入れられないのは、私有財産=自由を否定するからに他ならない。
国家による経済統制を進める国家主義は、自由の否定という意味で、共産主義と同じである。

国家の役割を、無定見に拡大するのが、そもそも問題なんだろうと思う。
何があっても「国が悪い」だと、国も、次々に規制を強めなくてはならないし、そのフォローのためにカネを使わないといけない。
とはいっても、、、もう遅すぎるんでしょうなあ。。。