Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

マリーゴールドホテルで会いましょう

マリーゴールドホテルで会いましょう」デボラ・モガー。

インド系医師のラヴィは英国で開業しているのだが、義父のノーマンが突然押しかけてきた。
ノーマンは若い頃から女癖が極端に悪く、どこの施設にいってもセクハラ三昧。すぐに追い出されてしまう。
この状況を従兄弟に相談したラヴィは、新規事業を思いつく。
インドのバンガロールの知り合いのホテル(といっても老巧化で、観光客もめっきり減っている)をホームに改装してしまおうと言うのだ。
もちろん、老人ホーム等とは言わない。「人生経験を積んだあなたがゆったりと寛ぐためのホテル」なのだ。
何しろ、英国の財政状況も悪く、今や「ゆりかごから墓場まで」なんて死語である。
インドなら、そんなにお金をかけなくても暮らしていけるし、ビッグビジネスになるに違いない、というわけだ。
もちろん、そんな目論見はまったく外れてしまうのだが。。。

そこに、色々な人達が入所してくる。
セクハラ男のノーマンは言うにおよばず。息子がヤバイ仕事に手を出して海外逃亡しているが、きっとどこかで立派な仕事をしていると信じているおばあさん。
すこし認知症がでてしまっている人。
OLとして働き続けた人。かわいがっていた猫を、強盗に殺されてしまった人。
一見、とても中の良くていつも一緒の夫婦。しかし、夫の心はいつも空虚。
米国で息子は大成功している(はず)なのに、義理の嫁に疎まれて、ここに送られてしまった人。実際は、稼いでいるのは嫁のほうだったのだが。
そんな色々な人がインドで、決して明るい未来ばかりでないけれども、でもそれなりの関係を築いて、このマリーゴールドホテルで暮らしていく。


長編だけど、誰か特別に主人公がいるわけでもない。まあ、ノーマンは主人公ぽいけど、あとで死んでしまうし。
それぞれの登場人物のアンソロジーという感じである。

評価は☆。
じっくり、ゆっくり楽しめる。しかし、この小説の味がわかるには、やはり自分もある程度の年齢になっていないと難しいように思う。
若いうちは、夢や希望をもって頑張ることが正義であって、ほかのことに大した価値を見出さないものである。


本書は映画化もされたそうである。
しかし、よくあるパターンで、舞台だけを借りた全く別の話になっているそうだ。
そうだ、というのはいつものことで、私は映画を見ていないからである。
見たい気持ちもない。
この小説が面白くなかったわけではなくて、小説を読んだら充分だと思うからである。
どうも、私のアタマの中では、映像というのは「蛇足」だということになっているようだ。
というか、映像を見ている時間が勿体無いと思ってしまう。
活字なら、もっと簡単に内容がわかるじゃないか(飛ばし読みすりゃいいわけで)と思うのですな。

こういうところが、どんどん時代遅れになっていく要因でしょうなあ。ううむ。