Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ダブルマリッジ

「ダブルマリッジ」橘玲

 

大手商社勤務の憲一は50歳で、妻里美と大学生の娘マリがいる。里美は元役員の娘で、そのため憲一はエリートコースに乗っていると見られている。

その憲一は急な海外出張でパスポートの更新のために、娘のマリに戸籍謄本をとりに行かせた。ところが、マリの持ってきた戸籍謄本には、なんと妻が二人記載されていたのである。妻里美のほかに、妻マリア・ロペスというフィリピン人である。

憲一は市役所の戸籍課に行ってクレームをつけるが、課員は「法律通りの手続きをしただけ」だと弁明し、まったく取り合ってもらえない。これは現在の戸籍法の穴なのだが、海外から結婚の通知がきた場合、そのまま戸籍に記入することになっているのである。本人に通知するのだが、それを憲一はうっちゃっていたのだ。フィリピンでは日本にいう戸籍のようなものはなく、教会で結婚式をあげるとその神父が(フィリピンはカトリックがほとんど)結婚証明書を書く。その結婚証明書をマニラ市役所にもっていくと、自動的に日本の戸籍課に通知がいく。日本の戸籍課はそれを記入。したがって、ダブルマリッジ(重婚)状態になってしまうのである。

さて、重婚は日本の法律的には違法なのだが、このような海外通知を差し止める法はないので、これが成立してしまうのである。

憲一は重婚状態を解消しようと弁護士に相談するが、実はこれが難事なのだ。フィリピンは離婚ができない(カトリックだから)なので、代わりに「結婚自体が誤りだった」という過失の届けをだして最初から結婚していなかったことにするのだが、その書面をもらうには相手と交渉しなくてはいけない。そのとき、いったいいくらの示談金がとられるかは、交渉してみないと分からないのである。

実は、憲一は新入社員時代にフィリピンに赴任し、そこのキャバレーでマリア・ロペスと知り合い、のぼせ上がって地元の小さな教会で結婚式を上げたというわけだった。その後、憲一は本社に戻されて、そんなフィリピンの出来事は若気の至りと忘れてしまい、里美と結婚したのだ。別に役所に届けたわけでもないし、本人も忘れていたのだ。

ところが、さらに事態はややこしくなる。なんと憲一の戸籍に息子、ケンが追加されたのである。簡単にいえば、日本国籍をとったということである。そのケンは、日本に来ているらしい。

憲一と里美は、この事態をめぐって弁護士をはさんで離婚の話し合いをすることになる。一方、娘のマリはひそかにケンに会いに行くのだった。

やがて、憲一とマリは、それぞれの思惑のもと、まったく互いに知らないままでフィリピンに行く。

そこには、想像を上回る貧困と格差の世界があった。。。

 

 

海外と日本の法制度の違いから生まれる、いわゆる国際法務にかかる隙間をつくのが得意な橘玲らしい小説である。

そもそも、戸籍制度自体があるのが珍しく、アジアで日本、韓国、支那くらいである。かつて、「じゃぱゆきさん」が問題になったが、その彼女らが生んだ子供は日本人の父を持っているわけで、つまりは日本人になれるわけだ。そうすると「出稼ぎ外国人」ではなくなる。しかし、実際に日本人と同じ職につけるかどうかは別である。そして、フィリピン育ちの彼らは、例えば典型的なフィリピン男と同じメンタリティになってもおかしくない。つまりは、女からカネを引っ張り、働かせて遊んで暮らし、面倒になったら女を変えるというスタイルである。わかりやすく言えば、歩くホストクラブだ。

そんな現実を描き出した作品である。

評価は☆☆。

相変わらず、目の付け所がうまいなあ。

 

ところで、最近、大久保あたりでいわゆる「立ちんぼ」が出現し、さすがに警察が取締まりを始めたらしい。実は、売春すること自体は違法ではない。管理売春、つまり「人に売春させる」と違法である。そのほかに、実は公衆の場で売春の声をかける「路上売春」はこれも違法なのである。ただし、罪は大したことはない。なので、ほとんどは起訴されることはなく、せいぜい留置場でちょいとお世話になって釈放である。

こういう人たちが増えると「なんと、そこまで日本人は貧しくなったか」と嘆くというのが識者といわれる人たちのパターンなのだが、実際はこれらの女性のほとんどがホスト通いのためにこんな副業に手を染めているらしい。

ホストというのは、恋愛テクで女を入れ込ませて、店にツケを作らせる。女はホストに会うために(ツケを払うため)売春に走るという構図である。こういう疑似恋愛というか、人の心のゆらぎにつけ込むのがビジネスなのかと疑問に思っているのだ。もちろん、そんなのお互いの自由だと言われれば、それまでなんであるが。

 

え?持てない男の僻みじゃないか、と。。。そんなことはないっ!、、、、ないと思う、、、たぶん。。。くっそー。