Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

江戸の卵は一個400円

「江戸の卵は1個400円」副題は「モノの値段で知る江戸の暮し」丸田勲。

面白いタイトルで、思わず手にとってしまう。
これが「花魁との床入りは500万円」だと、なんじゃそりゃ?になってしまうだろう。
卵という現代日本の物価の優等生と比較した編集者のセンスは良い。

いわゆる一文の価値がいくらくらいなのか、これは江戸時代も後期になるとだんだんインフレが進んでいくので一律ではない。
本書では、文化時代あたりを目安にして、およそ20円という値をつけている。
かけそば一杯が十六文だから、320円というわけで、およそ現代の物価と一致する。

大工の手間賃が一日およそ1万800円。年収にして300万円超となる。
そうすると、当時のエンゲル係数は40%くらいと推測されるそうだ。
これでは生活は苦しいかと思えば、意外にそうでもない。
現代と大きく異なるのは住居費である。
いわゆる長屋暮しであれば、家賃は月額1万円程度で済んだ。大工の手間賃1日分なので、それは安い。
相対的に食費が高くても、生活が充分に成り立つわけである。

さて、花魁の床入りが500万円というのはすごいが、これは花魁の揚代以外に、お茶屋に振る舞ったりその他大勢に祝儀を出したりしなければいけなかったためである。
ただの岡場所の遊女あたりだと安くて、だいたい2~3万円というところ。これなら分かる?(笑)
素人のアルバイトだともっと安かったようだ。
なんの世界でもプロのほうが高くあるべき、というのは当然であろうなあ。

おどろくべきは江戸の酒の消費量である。
なんと年間百萬樽を消費した。一樽が72リットルである。
当時の江戸の人口は世界一の100万都市。ということは、一人アタマで年間72リットル飲んだことになる。
女や子供はそれほど飲むわけもあるまいから、飲み手で考えて半分だろうから、一人144リットル。
これを、ええい、365日で割ってみる。
すると、毎日400ccというわけで、これは結構な呑助である。
一合が180ccとして、毎日2合ちょいを飲んだことになるんだからなあ。

評価は☆。
面白い読み物であった。

さて、東京は世界で一番、酒に寛容な都市であると言われる。
「酔ってたので仕方がない」などという言い訳が普通にされたりする。
酔っ払った上の狼藉も珍しくなく、外国人からすると奇異な感じがするらしい。
なんでだろう、と思っていたのだが、ははあ、と思いついた。
こりゃ江戸時代の名残であろう。
こんな酒好きばかりが集まっていた都市だもの、そりゃあ酔っ払いには寛容だったに相違ない。
げにおそろしきは伝統、というわけだなあ。