Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

謎とき 東北の関ヶ原

「謎とき 東北の関が原」渡邊大門。

関ケ原の合戦は、徳川による上杉征討軍が東上中、西で石田三成挙兵の報を聞いて引き返して決戦に及ぶわけであるが、その後の上杉家を巡って起こるのが「東北の関が原」ということになる。
主な登場人物は上杉景勝伊達政宗最上義光ということになる。

まず本書では、景勝がいわゆる「五大老」の中では一番の新参者だったことで、家康との関係が微妙であったことに触れている。
そもそも、上杉が越後から会津へ転封されたのも、もちろん加増はあったものの、ようは蒲生氏郷のあとで、江戸を東北から見張るのが狙いである。
しかし、家康と景勝は、そうはいっても表立って何か争いがあったというわけでもない。
また、景勝が特別に秀頼に忠義立てしている様子もなさそうである。
単に「攻められたら武門の意地で、受けて立つ」というような、単純な動機だったようだ。
本書では、いわゆる「直江兼続石田三成の事前密約」はなかった、という分析である。

その上で、史上有名な「直江状」について分析する。
直江状」については、後世の創作説がついて回ることもあって、その真偽の吟味が中心となっている。
本書では、やはり偽作説を支持している。
ただし、おそらく直江山城による原本があって、それを後世で面白おかしく脚色してでっち上げたのが現在伝わる直江状であろう、ということになっている。

とまあ、ここまでは良いのだが、肝心の「東北の関ヶ原」である長谷堂城の戦いについては、ごくあっさりと記述。
なんだか、半分騙されたような、、、まあ、タイトルが悪いのであろうなあ。
評価はナシで。


こういう新書のタイトルは、編集者がつけるのである。
そのとき、ちゃんと内容に沿ったタイトルをつければ良いのだが、そうではなくて「売れそうな」タイトルを付けるやつがいるのである。
なぜか?
そりゃ、そういう編集者は「賢い」からである。
作家志望くずれの編集者が幅を利かせたのは昔のことで、今の大手出版社は人気業種であり、一流大学卒の偏差値の高い連中が就職してくる。
彼らは賢いから、編集者の評価が「仕事ぶり」ではなくて「結局は売上」なんだと知っている。
内容はさておき、売れるタイトルを付けるのだ。

出版業界からしてこうなので、他の業界も推して知るべし。
この10数年、日本は「失われた時代」を過ごしているが、それはこういうことなのだ。
賢い人間が「効率の良い仕事」をするからである。
馬鹿な奴が、馬鹿な仕事をすると、中には偶然大当たりしてしまうことがある。
けれども、賢い人間は賢いので、馬鹿な仕事はしない。
こういう「売れる仕事」をする。

粗製乱造といわれる新書の中にも、魂の入った仕事がしてある本もある。
しかし、最近は、なかなかそういう書物も見かけなくなった。
寂しいことである。