Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

アルゴリズム・キル

アルゴリズム・キル」結城充考

 

この人の若き女性刑事が主人公の「クロハシリーズ」4作目。
「プラ・バロック」と「エコイック・メモリ」は読んだ。かなり特徴のある文体で、ブレードランナーのように常に雨が降っており、攻殻機動隊のようにクールな作風。いや、ほんとなんだってば。
ちなみに3作目の短編集は未読。見つけたら読むかもしれない。

本作では、主人公クロハは本部の刑事部から所轄の警察署の警務課に異動になっている。
理由はよくわからないが「しばらくゆっくりしろ」らしいので、不祥事があったというよりも、少し楽な部署でリフレッシュしろという意味合いのようだ。
その所轄でクロハの存在は浮いている。
なにか、皆がなんとなくクロハを警戒している雰囲気がある。
ある日、警察署のイベントが有り、そこの警備で出席したクロハだが、そこに傷だらけの少女が乱入してくる。
どうも虐待の痕跡があるのだが、どう調べても身元がわからない。
クロハはこの件を独自に調べ始めるが、そこには無登録児童の問題が隠れていた。
なんらかの理由で出生届が出されず、戸籍がない子どもたちがいるらしい、という情報である。
虐待のターゲットになっているのは、そのような子供たちらしい。
彼らは、最近話題になってきた3Dリアルのゲームで、事故があった地点に柱を立てていることがわかった。
現実世界を、ゲームの3Dグラスを通して見ると、そのポイントに柱がバーチャルリアリティで見える、というわけである。
この柱を誰が、なんの動機で登録しているのか?その謎をクロハは追う。
一方で、クロハの所轄署で、経理担当者が自殺。どうも、署内での裏金処理を苦にしてのものだったらしい。
この所轄は、数年前にも裏金問題で処分対象になっており、裏金操作は根絶されたはずだったが、まだ残っていたのである。
クロハは、本部からその内偵のために異動してきた、わかりやすくいえばスパイだと思われていたわけだ。
本部から管理官が派遣され、裏金疑惑が明らかになる。
一方で、クロハの捜査はついに虐待で瀕死の児童にたどり着く。その児童から、ついに犯人を聞き出すことに成功する。
その意外な犯人とは。。。


前作からトーンが変わらないのがいい。
クロハの、美人だけど孤独な雰囲気がよく出ている。しかし、実際にこんな若くて美人の女性が孤独ってあり得るか?まあ、そこが小説ってことで(笑)
評価は☆。

 

このシリーズはVR空間が出てくるのが特徴で、そこで出会ったアバター達との会話が彼女の唯一、人間らしくうち溶ける瞬間という設定が、ある意味で現代ぽいのかもしれない。
まあ、現実のネットはご存知のとおり、罵詈雑言と「いいね」を集めたい軽薄な正義感の集積場ですが(苦笑)
人間の一番「らしい」ところを出している、という意味ではただしいのか。。。なるほどねえ。

実際の人間関係は気も使うし、なんでも言うわけにはいかない部分も当然ある。
だけど、そういう「気遣い」があるほうが、やっぱり人間として正常じゃないのかな、と思う次第。
この作品では、VR空間でも、そのような「気遣い」があって、むしろリアルな世界より救いになっているという設定なのだ。
ネットでそんな「気遣い」が普通にできるようになるには、まだまだ時間がかかりそうな気がしますな。
中共みたいに、全員監視制度であれば、実現するんでしょうかねえ。