Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

トッカン-特別徴収官-

「トッカン」高殿円

トッカンとは「特別国税徴収官」のことである。
税金を払わない(払えない)人々から徴収するのが仕事である。
本書は、テレビドラマ化されたようだ(テレビを見ないので知らない)

主人公は、京橋の女性徴収課員「ぐー子」で、上司がトッカンなのだ。
恋人もおらず、安定を望む彼女は、親の反対を振り切り、税務署に務めることになった。そうしたら、上司は「死神」というあだ名のトッカンだった、という設定。

最初のエピソードは、売上を過少申告して脱税しているカフェのオーナーの手口を見破り、そこから徴収する話。
脱税を見破るのは徴収の仕事でなく、査察とか資料調査の仕事であるが、この件は資料調査に恩を売る形で進められる。
1週間以内に手口を見破る必要があるのだが(1件の処理に時間はかけられない)駆け出しのぐー子には、この手口が見破れない。
結局、上司が内部告発によってその手口を突き止める。
徴収は、オーナーの愛人が溜め込んでいた資金を差し押さえて一件落着。その過程で、オーナーの奥さんに匿名の浮気情報を提供するなど、まあエグイ話も。

次は、某大企業社長の次男坊で、有力政治家の秘書をしている次男坊。
こいつが政治資金づくりに裏金牧場をやっているのを突き止める。
この話は、政治家の圧力によって揉み消されてしまうのだが、しかし、大企業社長が愛人にしている銀座のクラブのママの脱税を突き止めて課税。
ところが、そこで差し押さえた古い着物にママはなぜか固執する。
税金を支払いにきたママに、ぐー子は「まだ手続きがあるから」と言って一言で追いかえすのだが、それで報復を受ける。
偶然知り合った同年代の女性と夜遊びをし、彼女のツケにしたところを「利益供与」としてマスコミに叩かれたのだ。
退職を覚悟したぐー子は、最後の残務処理と思い、向かった先はすで実質倒産状態、悲惨なプラスチック工場。
そこで、あわや一家心中の場面に遭遇する。
上司のトッカンが「徴収できなくても、行け」と言っていた意味を彼女は悟る。これがあるかもしれないから、だったのだ、と。

評価は☆。
著者はラノベ作家だそうだ。
なるほど、シリアスなテーマを軽妙に描いている。
ブコメっぽい雰囲気が漂うのも、そのせいか。
いかにも、テレビ向きな作品で、肩がこらずに読める。

ところで、本書のなかでトッカンが「国税徴収法は最強の法律」だと述べるくだりがある。
これは事実である。なにしろ、裁判所の差し押さえ令状すら、不要なのである。
徴収官がビシバシと抑えてオシマイなのだ。

さて、どうして、そこまで国税徴収法は強いのか?
まあ、公式的には本書にある通り「税は国家の血液だから」ということになる。
しかし、もっと簡単な答えがあるのだ。
裁判官が、仮に「そんなことはいかん」と異議を申し立てたとしよう。
すると、国税徴収官は、きっとこう答えるであろう。
「ははあ。わかりました。それでは、判事のおっしゃるとおり、強引な取り立てはしないことにしましょう。そうなりますと、税収はあがりませんね。判事の給料も、来月から半分ということになりますが、よろしいですね?」
誰が、この法律に文句をつけるもんかね(苦笑)
これほど、クリアな法もありませんよ。